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顧客のリピート、成長占う

SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏

「印刷機のシェアリング」で印刷業界に革新をもたらしたラクスル。名刺やパンフレットを作りたい人と印刷会社をマッチングし、あらゆる印刷物を短期間で作ることを可能にした。

創業者で最高経営責任者(CEO)の松本恭攝さんとは創業して約1年後にお会いした。コンサルティング出身の松本さんはアナログの商習慣が強く残る印刷業界の構造問題を熟知していたし、事業計画のプレゼンテーション(ピッチ)も素晴らしかった。しかし、当時の私は投資の決断はできないでいた。難易度の高いアイデアだったからだ。

1年後、もう一度お話を聞く機会に恵まれた。その日、松本さんが持参した事業計画書のとある1ページを見て、私はにわかに身を乗り出した。中身は「リテンション・レート」。過去の顧客のリピート注文率を示すグラフだった。激しく反応する私に彼は「そのリアクションを待ってました」という顔をした。

そのページを彼は2時間もかけて説明した。顧客のリピート率はその会社の未来の成長を占う。私もそのページだけを見てとことん質問した。「この曲線はなぜこうではなく、こう進んできたのか」「こうすればもっとこういう形になるのでは」。その時、彼がいかに自分のプロダクトをとことん考えて作ったかがはっきり分かった。

その後、ラクスルを実際使った顧客に感想を聞いてみた。「イベント3日前に名刺が不十分だったことに気付き利用した。急行便で届いたがあと一歩の出来だった。連絡するとすぐやり直してくれ、納得できるものが届いて驚いた。次も使う」。年末に急にチラシが必要になった顧客は「年内いつまで営業していますか」とたずねると「逆にいつまでに必要でしょうか」と返され対応力の高さからファンになっていた。

どの感想も、顧客がサービスを利用する際に感じる疑問点や課題を先回りして解決する「カスタマーサクセス」を称賛する点が共通していた。ユーザーはまるで月額費を払うような頻度で印刷物を注文している。業界での経験を持たない会社ゆえ、「顧客の声を元にサービスを定義するしかなかった」と松本さんは振り返る。

1件5000円の受注も、創業者自らが営業をし顧客に電話でヒアリングした。その過程で顧客が持っていた印刷会社への不満が何だったかを知り、改善を繰り返していった。結果的に、これまで印刷業界が対応してこなかった多くのサービスを組み立てることができた。

ラクスルを上場に導いた成功要因は、創業者自身とそのチームがカスタマーサクセスを体現したことに尽きると考えている。あのリテンション・レートのページを見た時、時間はかかっても上場し、1000億円の企業に至ると直感したのは間違いではなかった。

[日経産業新聞2020年4月15日付]

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