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春秋

1982年のゴールデンウイークだった。友人に誘われ、横浜で映画を見た。目当ては和泉聖治監督の「オン・ザ・ロード」。渡辺裕之さん演じる白バイ警官の節義を描いたロードムービーだ。DVD化はされていないが、リバイバル上映されるなど根強い人気がある。

▼2本立てで同時上映されたのが、大林宣彦監督の「転校生」だった。自身の古里、広島県尾道市の美しい海と坂道の風景。シューマンのトロイメライで始まる冒頭シーンから引き込まれた。体が入れ替わってしまった幼なじみの中学生の男女を、尾美としのりさんと小林聡美さんが演じた。日本映画史に残る青春の名作だ。

▼がんを患い、余命を告げられながらも作品を撮り続けた大林さんが逝ってしまった。82歳だった。遺作となった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は、くしくも監督が旅立った10日から全国の映画館で公開される予定だった。これも尾道市が舞台だ。が、新型コロナウイルスの影響で公開が延期された。天を仰ぎたくなる。

▼作品舞台をファンが訪ねることを聖地巡礼と呼ぶ。その先駆けが大林作品だ。尾道市のロケ地を巡る人波は今も絶えない。先月、取材で同市を訪ねた際、海沿いの民家にカメラを向けている人がいた。聞けば「転校生」で尾美さんが演じた中学生の実家の撮影地という。海と坂道の聖地に哀悼の花束が手向けられるだろう。

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