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地元の支えで「無料」維持 瑠璃光寺五重塔(山口市)

おもてなし 魅せどころ

NIKKEI MJ

室町時代、守護大名の大内氏の下で繁栄し「西の京」の呼ばれた山口市。当時の繁栄を今に伝える数少ない建築物が国宝の瑠璃光寺五重塔だ。中心街から少しばかり奥に入った山すそにひっそりと立っている。瑠璃光寺の境内外側の市立香山公園の一角にあり、24時間無料で拝観できる。

桜が開花し、花見客が訪れた香山公園

五重塔は大内氏25代の義弘の菩提を弔うため、26代の盛見が建てた。義弘は大内氏の勢力を拡大したが、室町幕府の将軍・足利義満と対立して1399年に敗死。塔が完成したのは1442年、28代教弘の時代とされる。

この五重塔は上層ほど屋根や塔身の幅が狭く安定感があり、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根は軒反りの曲線が美しい。毎日夜にライトアップされ、複雑な木組みが闇に浮かぶ荘厳な姿を観賞できる。大内文化の最高傑作といわれ、奈良県の法隆寺や京都市の醍醐寺の五重塔と並んで日本三名塔とされている。

近くには作家の司馬遼太郎の文学碑があり、「長州は、いい塔をもっていると、ほれぼれする思いであった」と刻まれている。

山口市内で最も人気のある観光スポットで、年間50万人を超える観光客が訪れる。香山公園の前には無料で利用できる駐車場があり、以前から「有料化すべきではないか」との意見もある。しかし、市はここを訪れた観光客が近隣の龍福寺や菜香亭、十朋亭維新館などに回遊し、周辺地域も含めてにぎわいが創出されることを目指しており、有料化には消極的だ。

ただ、市の狙いはまだ功を奏していない。昨年来の日韓関係悪化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きく、最近は五重塔を訪れる内外の観光客も減っている。代わりに目立つのは家族連れなど、地元の住民だ。山口市観光ボランティアガイドの会の森文子会長は「七五三や入学式、卒業式、結婚式など人生の節目に訪れる市民が多い」と話す。

実は五重塔は過去、解体の危機にひんした時期があった。瑠璃光寺の敷地にはもともと大内義弘が創建した香積寺があり、塔はその境内に建てられた。だが、大内氏の滅亡後、仏殿は広島に移され(現不動院金堂=国宝)、寺は萩に移転。五重塔も解体されそうになったが、住民が嘆願して残された。1690年に瑠璃光寺が移転してくるまで80年以上、地元住民が管理していたという。

駐車場を有料化すれば、住民が気軽に訪れられなくなる。観光客が無料で拝観できる背景には、五重塔に対する地元の深い思いがある。

(山口支局長 谷川健三)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2020年4月12日付]

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