春秋

2020/3/30付
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新しく入った社員を一堂に集めてトップが訓示する以外にも、入社式と名のつくものがある。「男子結社や秘儀的集団に加入するため」の通過儀礼のことと、平凡社・世界大百科事典は解説する。西アフリカのクペル族が学齢期になった少年に課す儀礼を紹介している。

▼少年たちは腹に鶏の血が入った袋を巻きつけられる。仮面をつけた男たちが胴上げし柵の中に投げ入れるとき、槍(やり)で突き刺すまねをする。袋が破れ血が流れるさまは、少年が死んだことを表す。正式に集団に迎えるための区切りの意味があるのだろう。こうした儀式を経て部族内の地位や権利を得られるようになるわけだ。

▼企業の入社式も通じるものがある。日本の正社員は職務変更や転勤に柔軟に応じる代わり、雇用が基本的に保障される。その仲間に入る儀式なのかもしれない。これまでの日本では、この道を究めたいと本気で思う新入社員は多くはなかった。会社のメンバーになるという意味の「入社」式は実態をとらえていたといえる。

▼新型コロナウイルス対策で中止になったが、日立製作所は4月の入社式を「日立キャリア・キックオフ・セッション」という名前に変えて開く予定だった。新入社員に、会社に依存せず能動的に得意分野を磨いてほしいというメッセージを送るためだ。見送られたのは残念だが、会社の通過儀礼には変化への胎動もみえる。

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