春秋

2020/3/23付
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南極大陸を除くすべての大陸に広がった――。新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)ぶりは、いまやこう表現される。小松左京が1964年に発表した「復活の日」を思い浮かべる方もいるだろう。たまたま南極に居合わせた人たちが新種の感染症を生き延びる、SF小説である。

▼80年に映画にもなったこの物語で人類を絶滅の瀬戸際に追い詰めるのは、人工的につくられたウイルスだった。不気味なことに、いま現実に世界を揺るがしている新型ウイルスをめぐっても「人工的に生み出されたのでは」と疑う声が早くから流布している。科学的に不確かで、いかにもSF的な陰謀論のたぐいではある。

▼もちろん、陰謀論にはもっともらしい材料がつきものである。いわく、震源地の武漢には中国で最高レベルのウイルス研究施設がある。いわく、当初この施設の建設に協力したフランスが途中で手を引いた。いわく、ウイルス感染対策がテーマの会議で習近平国家主席はなぜかバイオハザード対策の大切さを強調した……。

▼一方、中国外務省の趙立堅・副報道局長は最近、武漢にウイルスを持ち込んだのは「米軍かもしれない」とSNSに書き込んだ。こちらはそれらしい根拠さえない。中国政府はこのところ新型ウイルスの「中国起源説」の払拭に躍起なので、その一環なのだろうか。外務省スポークスマン自ら陰謀論を発信とは、いやはや。

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