みんなの目で事故減らす
SmartTimes BEENEXTファウンダー・マネージングパートナー 佐藤輝英氏

2020/3/23付
保存
共有
印刷
その他

年間135万人。全世界で交通事故によって命を失う人の数だ。加えて、年間で2千万~5千万人が何らかの交通事故に遭遇している。残念ながら悲惨な事故は、なかなか減っていない。特にスマートフォンが普及してからは「よそみ運転」が増加している。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

交通事故による損失は世界の国内総生産(GDP)の3%に上るともいわれ、ネガティブインパクトは甚大だ。各国がリポートしているが、インドは世界の死亡事故数の11%を占め、不名誉にも世界最大の数を持つ。人口が多いことも理由の一つだが、車の整備レベルや、道路コンディション、交通ルール順守レベルなどがそろって低いこともその要因である。インド政府は2019年に交通違反へのペナルティーを大幅に増額するなど一定の手を打っているが、まだまだその不名誉な地位を挽回するにはほど遠いのが現状だ。

この大きな課題に立ち向かう会社がデリーにあるナヤンテックだ。同社はクラウドソースと人工知能(AI)で交通違反を取り締まる技術を開発した。

まずタクシーや運送会社のドライバーのスマホに独自のカメラアプリをインストールしてもらう。ドライバーはスマホを車のダッシュボードに置き、カメラアプリを立ち上げたまま、いつもどおりに運転する。

そこから集まるクラウドソース化されたデータと、街中に存在する様々な監視カメラから収集されるデータを合わせる。そして独自の機械学習アルゴリズムとパターン認識技術を使い、信号無視や急な車線変更、シートベルト無着用や違法駐車といった交通違反のデータだけをリアルタイムに抽出する。それを管理者がダッシュボードで閲覧できるようになっている。

もちろんプライバシーに関する情報はマスキングし、車のナンバープレート情報だけが蓄積される。みんなの力で交通違反を取り締まるソリューションを展開しているのだ。交通違反データだけでなく、道路の整備状況や安全状況も取得し、異常があれば自動的にそちらもリポートできるようになっている。

創業者のジャヤント氏は米ジョージア工科大学でロボット科学と人工知能の博士号をとり、米空軍などで勤務経験のある筋金入りの技術者だ。米国での悲惨な交通事故を目の当たりにして問題意識が芽生え、17年に母国であるインドに帰って同社を立ち上げた。

このシステムは、インドのいくつかの都市で実験的に採用が進んでいる。ドバイ警察でも今年初めから正式に技術が採用され、技術の運用が始まっている。

ナヤンとはヒンディー語で目を意味する。みんなの目をネットワーク化し、社会実装できるシステムを作り上げた同社。インドの新世代を代表するテクノロジー企業のソリューションが世界に広がっていく日も遠くないかもしれない。

[日経産業新聞2020年3月23日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]