思わぬ天災、常識を変える 新型コロナで新サービス台頭
奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

2020/3/20付
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NIKKEI MJ

新型コロナウイルスの感染拡大が日本中、いや世界中に大きな影響を与えている。不要不急の外出を控えるよう政府が求めた結果、企業はリモートワークへの転換やイベントの自粛に追われ、さらには全国一斉の休校要請で学校も家庭も大きな影響を受けた。

2018年の大阪北部地震でも行政がツイッターで応急給水や避難所開設などの情報を発信した

2018年の大阪北部地震でも行政がツイッターで応急給水や避難所開設などの情報を発信した

いつウイルスが終息するかは我々素人に全く予想はできないが、少なくとも企業人として覚悟しなければならないのは、感染が収まったとしても私たちは今回のウイルス発生前の世の中に戻ることはできないという点だろう。

これまで、幸いにも日本では重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、そしてエボラウイルスなど深刻な感染症が集団発生しなかったため、世界における感染症の流行にどこかしら人ごと感があった人は少なくないはずだ。

ただ、国境を越えて世界中の人が行き来する現在において、日本も十分に関係しうることが明確になった。その結果、今回の感染拡大の過程で、企業のリモートワークに対する準備の差が大きく出たのは間違いない。

筆者はネット系の仕事をしていることもあり、利用しているツールもクラウド型のサービスが多い。自宅でも職場と遜色ない環境で仕事ができる。ただ「Zoom」などのビデオ会議はあまり使ったことがなく、今回改めて業務で活用してみて、数年前に比べて格段に使いやすくなっていることに驚いた。

国土が広くビジネスで電話会議を頻繁に使う米国などに比べると、面と向かって会うことが多い日本ではビデオ会議はそれほど普及しないのではないかと考えていた。多くの人が今回、ビデオ会議の使い勝手の良さに触れたことで、日本の商習慣が変わる可能性は十分あるだろう。

他にも、企業向けチャットツールや、仮想現実(VR)を使った仮想空間におけるイベント開催、オフィスを移動するビデオ会議のためのロボット等も注目されている。

こうした話は、まだ多くの人には荒唐無稽に聞こえるかもしれない。しかし実は9年前の東日本大震災の時にも、いくつも大きな変化が生まれている。その1つがツイッターの活用だ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

ツイッターは当時、私を含めネット系企業の人間は広く使うようになっていたが、まだ日本では個人の「つぶやき」のためのサービスという印象が強く、企業や組織が活用するイメージは少なかった。

ところが地震の発生直後、携帯電話も携帯メールもつながらなくなったとき、ツイッターが我々のコミュニケーションプラットフォームとして機能した。筆者もツイッターの検索機能で地下鉄復旧を知ることができ、運良く帰宅できたことをよく覚えている。

その後、震災直後の3月13日には首相官邸が災害関連の政府支援活動を発信するためにツイッターの公式アカウントを開設するなど、行政や地方自治体などが次々と活用。ツイッターが日本における情報インフラとして広がる一つのきっかけとなった。

おそらく今回の新型コロナが終息した後にも、同様の変化がいくつも起きている可能性が高い。「ウイルス感染前の日本に早く戻ってほしい」と考えるのではなく、「ウイルス感染後に日本はどう変わるべきか」をぜひ考えていきたい。

[日経MJ2020年3月20日付]

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