春秋

2020/3/19付
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25年前のきょう、山梨県にあったオウム真理教の施設では、教祖、松本智津夫元死刑囚の命を受け、急きょサリンの生成が始まっていた。実は教団は当時、強制捜査を恐れ、持っていた関連の薬品の大半を廃棄、残った材料でできたのは純度が30%前後だったとされる。

▼それでも翌20日朝、東京都心の地下鉄でまかれ、死者13人、負傷者6千人超という甚大な被害を出した。化学兵器の威力に戦慄を禁じえない。この事件で製造をになった中川智正元死刑囚に台湾出身のアンソニー・トゥー氏が拘置所で15回面会、様子を本にまとめている。毒物の権威として警察の捜査にも協力した学者だ。

▼トゥー氏は元死刑囚を通じ、教団が猛毒のVXや炭疽(たんそ)菌も含めた生物・化学兵器を扱うようになった経緯を知った。そんななかで「教祖しか知らないことがたくさんある。裁判で自ら話すといいが」との言葉も引き出している。なにゆえ街のヨガ道場が、国家の転覆をはかる武装集団に変貌したのか。なぞは解けぬままだ。

▼3年前、マレーシアで金正男氏がVXで暗殺された際には、同国から治療法の問い合わせが元死刑囚にあったという。専門誌に論文も出し「これ以上、被害者も加害者も出したくない」との思いを執行直前に記している。優秀で心優しかった若者が、なぜ心身を縛られ、凶悪な犯罪に走ったか。このなぞもまだ残っている。

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