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創業当初は節約が大事

SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏

「では私が御社の名刺をスキャンしに行きますよ」。Sansanの共同創業者は簡単に言った。我々が面倒がってやらずにいた「名刺の読み取り作業」を、代わりに自らが来てやってくれるという。「それ、早く言ってよ~」のテレビCMで有名なSansanは、今や日本を代表するSaaS企業だが、創業後はひたすら節約に努めていた。

2007年、異業種に勤める学生時代の友人たちで共同創業した。まだSaaSという言葉もなかった頃だ。最初の2年はほとんど資金調達が進まず、創業者たちは全員無給だった。

小さな「名刺専用スキャナー」を顧客のオフィスに置き、読み取った名刺をクラウド上で管理する。創業1年目に紹介を受け、投資を考える前にまず自分たちで導入することにした。しかしスキャナーは置いたものの実際は名刺をため込みがちだった。そんなときに冒頭のセリフを言われた。私は「それ、全ユーザーにやってるの」と驚いた。

彼らは名刺の読み取りが進んでいないユーザー企業はどこか、しっかり把握していた。そういう顧客は放っておくと解約率が高まることも分かっていた。時に積極的に連絡し、オフィス訪問をして、作業の代行をしていた。それも創業者自らがスキャンしていた。

会社を訪問し、スキャンしながら「ユーザー企業の社員と会話ができたのは良かった」と彼らは振り返っていた。私も来てもらった時「あったらいいな」と思うサービスの要望をぶつけてみた。「発信者と配信先を結びつけて営業マン個々の名前でメールが送れる機能をつけてほしいです」。後に装備された機能は本当に便利で、利用している企業も多いはずだ。もし読み取りにきてくれたのが決定権を持たない社員だったら、我々も要望をぶつけていなかったかもしれない。

彼らは創業者自らが泥臭く手足を動かし、サービス改善をしていた。驚くことに創業2年目で単月黒字になった。こんなスタートアップはあまりない。ほれ込んで09年に投資させていただいた。現在の時価総額は2000億円に近い。

創業期は節約をしなければ、持久戦になったときに兵糧が尽きる。しかし早期に多額の資金を調達すると、スタートアップの中には節約とは逆の行動をとってしまうことがある。

たとえば売上急増を優先させ、まだその時点では経営幹部がやるべき仕事まで即席の営業部門や顧客サポート部門に任せてしまう。あるいはサービス改善が終わる前にテレビのCM放映を始めてしまい、赤字が膨らむ。それを埋めるため、また増資をするなどだ。

この数年、創業早々から累計調達金額の大きさをアピールするスタートアップが増えた。しかしカネは多く集まり過ぎると、無駄なところに回る事も多いのだ。そのことに投資家は気付き始めている。

[日経産業新聞2020年3月4日付]

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