グーグルマップ、毎日2割起動 MaaSから店情報まで網羅
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者・杉山信弘氏
公共交通機関や自動車メーカー、IT(情報技術)企業によって次世代交通サービス「MaaS(マース)」の実証実験が日本各地で行われている。あらゆる交通手段をシームレスにつなぎ人々の移動を効率よくするこの考え。既に実装しつつあるのが地図アプリ「グーグルマップ」だ。

おなじみのアプリが目覚ましい機能進化と利用率の向上に成功している。フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、月間利用者数は4200万人、日間起動率は3年前と比べ7ポイント近く高まり、18%に迫る。
グーグルマップは地図やカーナビのアプリとして認識されているが、頻繁な機能追加により、電車移動のユーザーや複数の移動手段を持つ人により有用なものとなった。
一つは電車・バスを利用する場合だ。最寄り駅までや電車での移動時間といった基本情報に加え、降車駅の改札を踏まえた最適な乗車位置や合計料金など、移動に必要な情報がほぼ網羅されている。
配車アプリ「ジャパンタクシー」と連携し、グーグルマップで設定した目的地をジャパンタクシーに送りタクシーを頼める。「グーグルカレンダー」や「Gメール」ともつながり、ウェブで予約したホテルや飲食店が自動で地図上に示され、検索が要らなくなる体験を提供している。
ユーザーの生の声も積極的に集めている。メインタブに2月に追加された投稿機能では、場所にひもづいた口コミや写真の投稿を促している。情報を送るユーザーは「ローカルガイド」と呼ばれ、世界で毎日2千万件の情報が提供されているという。
ローカルガイドはゲームの要素を活用してレベルを管理され、運がよければ年に1回、米カリフォルニアにあるグーグルの本社で開く「コネクトライブ」という祭典に招待される。往復の旅費や宿泊費用までグーグルが負担するというのだから驚きだ。

集めた膨大な情報は、レストランのおすすめメニューやユーザー評価、混雑する時間帯などの情報に加工。グーグルの地図アプリだけでなく検索結果にも表示する。
膨大な情報が集積するサービスには周辺ビジネスが必ず勃興する。グーグル検索が支配的になり、検索エンジンでの表示を最適にするSEOが一大ビジネスとなった。現在は、地図での表示を最適化するMEO(Map Engine Optimization)も小売企業で大きな関心事になっている。
グーグルでは位置情報によって検索結果の表示順位が変わる仕様になっており、例えば「東京駅 おいしい レストラン」と検索した際に、一番目に表示される店舗と十番目では、集客能力に大きな違いが生まれる。事業者向けに「グーグルマイビジネス」というサービスが無償であり、事業者は公式の店舗情報や写真を投稿できる。
ウェブ上で情報管理の覇権を握っているグーグルが、ローカル情報を支配する日はそう遠くなさそうだ。
[日経MJ2020年3月4日付]