卍どもえ 辻原登著
平成の時代と女のはばたき
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題名からわかるように、女性同士の恋愛を描いた谷崎潤一郎の名作『卍(まんじ)』にオマージュを捧(ささ)げた長編である。とはいっても、そこは当代きっての技巧派作家である辻原登のこと、その「オマージュ」のあり方は一筋縄ではいかない。
物語は『卍』同様、2組のカップルを軸に展開する。有名デザイナーの瓜生とその妻ちづる、語学学校を経営する中子と旅行会社に務める妻毬子。ともにかなり裕福な暮らしを営む、勝ち組と...
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