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MaaS、業界超える

新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

1月に米ラスベガスで開催された世界最大規模のエレクトロニクス展示会「CES」に参加してきた。ディスプレーが折り曲げられるスマホやスマート家電などは目についたが、各社が競って打ち出していたのは新製品ではなくビジョンそのものだった。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

ビジョンを明らかにすることで、業界における自社の従来のポジショニングを明確に変えようとしており、それが最も顕著だった領域がモビリティーだ。航空会社として初めて基調講演したデルタ航空は、ライドシェア大手のリフト社と提携することで、飛行機に乗っている間だけでなく、顧客の旅行全体を一括管理するデジタルコンシェルジュになると宣言した。

ソニーは電気自動車のコンセプトカー「VISION-S」を発表し、「ソニーが自動車メーカーに転身か?」とブースは来場者の熱気にあふれていた。だが同社の33個のセンサーを搭載し、得意なエンターテイメント技術が詰まったこのプロトタイプを作ったのは「クルマへの貢献を深めるため」であり、量産予定はないという。自社でクルマを開発し走らせてみることで、いちサプライヤーではなく自動車メーカーと近いポジショニングでの製品開発を狙っているのだ。

トヨタ自動車は2000人が住む実験都市として静岡県裾野市の「Woven City」構想を発表した。トヨタが車をもはやモノ単体として捉えておらず、スマートシティーこそが移動サービスとしてのMaaSの本丸と考えていることが垣間見えた。なぜ業績が好調だった自動車メーカーが従来の車のモノ売りから脱却を急いでいるのか。ある自動車メーカー幹部から面白い話を聞いた。

「人は、飛行機に何乗ってる?電車に何乗ってる?と聞かれても、航空機メーカーや鉄道車両メーカーの名前は出さず、航空会社や鉄道会社といったサービス提供会社の名前を答える。ただ自動車だけは、車に何乗ってる?と聞かれると自動車メーカーの名前が言われてきた。これからは違う。ライドシェアや自動運転で移動サービス化されることで、人はウーバーだグーグルだと答え、彼らが使っている車体がどこのメーカーだとは誰も気にしなくなり、自動車メーカーは下請け産業となり競争力が失われる。これがMaaSの本当のインパクトだ」

確かに、シリコンバレーで見飽きるほど公道を走り回っているウェイモ(グーグルの兄弟会社)の自動運転のクルマは、車体はクライスラー社製だが、人はクライスラーの自動運転ではなく「ウェイモの自動運転」と言う。そんなウェイモはすでに全米のタクシー総数の4分の1に相当する8万2000台もの車両を発注し、業界の姿を激変させようとしている。

モビリティーを例にとるまでもなく、いまや業界や上流下流という従来の立ち位置を超えた戦いになってきている。自社のポジショニングを確立するために、各社は「自分たちは何者なのか?」という本質的な問いに対する答えが求められているのだ。

[日経産業新聞2020年2月25日付]

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