春秋

2020/2/19付
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きょうは二十四節気の雨水――などと書くとき、ふと迷う。雨水は「うすい」と読むのだが、振り仮名(ルビ)は要らないか、「あまみず」と読まれやしないか。そもそも「二十四節気」だって若者には難しかろう。漢字の読みというものは、つくづく厄介なのである。

▼とんだトラブルも引き起こすようだ。「香水のかおり床(ゆか)しきねやのうち」。戦前の話だが、作家の久保田万太郎がラジオ番組にこんな文言のある台本を用意したところ、当局がワイセツだから放送をやめよと言ってきたという。「床しき」を「とこしき(床敷き)」と読んだらしい。戸板康二さんがエッセーに記している。

▼昨今こういう珍事は起きまいが、10年前に改定された常用漢字表は、以前に比べて196字も追加された。書けなくても読めればいい、読んで漢字に変換できればいいというデジタル時代ならではの考え方が背景にある。「淫」とか「艶」とか「恣」とか、昔の検閲官だったら顔色を変えて飛んできそうな字も学校で習う。

▼文化審議会ではいま、「障害」の表記を「障碍」に改めるかどうかの議論が続いている。印象の良くない「害」よりも、戦前に主流だった「碍」を使おうという動きだ。しかし変更されたら、当分は大変だろう。そういえば「雨水」の次は「啓蟄(けいちつ)」。土の中から虫が出てくるイメージからか「けいつち」という誤読もある。

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