朝井まかて「秘密の花壇」(34)

朝井まかて「秘密の花壇」
2020/2/14付
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日本経済新聞 夕刊
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二章 青い月 1

夜の中を、あてもなく歩いている。

晩春のことで寒くはない。浜町(はまちょう)から永代橋(えいたいばし)を渡った。隅田川縁(すみだがわべり)は名残りの花が爛漫(らんまん)として、風がそよぐたび薄紅色が流れて交じる。

枝々の下を、興邦(おきくに)はただ彷徨(ほうこう)する。

口には一茎の草を咥(くわ)え、懐手(ふところで)をして外股で、裾を蹴るように歩く。月代(さかやき)など半年…

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