春秋

2020/2/8付
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新型のコロナウイルスによる肺炎の猛威は、製造業や観光といった実体経済に打撃を与えているだけではない。文化の交流にも余波は及んでいる。小社がお手伝いした奈良・唐招提寺の所蔵品を中国の上海博物館で展示する催しも、会期の半ばで中断を余儀なくされた。

▼鑑真和上の座像をまつる堂に納めた東山魁夷のふすま絵の数々に加え、和上が渡日のおりに携えてきたシャカの遺骨も国宝の塔に入り披露されたのである。昨年12月中旬に始まり、1万人近くが来場した日も。今月半ばまでの予定だったのだが、感染の広がりで春節を目前にした1月24日から臨時の閉館となってしまった。

▼「山川異域、風月同天」。日本から中国への支援物資の箱にあった文字が現地のSNS(交流サイト)で感動を呼んでいるという。鑑真が日本行きを決意する機となった一節で「国は異なれど天は同じ」の意味だ。博物館の館長からの小社の担当への手紙にも引用され、事態が落ち着けば会期延長も検討、とあったそうだ。

▼寺側のトップも「苦難を超え、日中の交流に尽くした和上の心にかなう」と応じたと聞く。「中止」やら「拒否」やら、きつい言葉が飛び交う一連の報道のなか、少し心休まる話として紹介させていただいた。そうそう展示会の名称は「滄海(そうかい)の虹」。一刻も早く混乱が収まり、青い海の両岸が七色の橋で結ばれますように。

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