クッキー制限、情報は本人提供 信頼に基づくサービスに
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

2020/1/31付
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NIKKEI MJ

グーグルの先日の発表がインターネット広告業界に大きな衝撃を与えた。外部の企業が個人ユーザーのネット閲覧履歴などを把握する「サードパーティー・クッキー」と呼ばれる仕組みを、提供するブラウザー「クローム」を通じて2022年までに制限するというのだ。

個人が自ら判断して情報を提供するサービスも(手前はマイデータ・インテリジェンスの資料)

個人が自ら判断して情報を提供するサービスも(手前はマイデータ・インテリジェンスの資料)

複数のウェブサイトを横断して活用できるのがサードパーティー・クッキー。これによってユーザーの趣味嗜好が分析でき、転職に興味がある40代男性と判定されると、訪れるサイトで中高年転職の広告が表示されやすくなる。

個人の特性や関心を「勝手に判断する」ことについて、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)をはじめとする昨今の個人情報保護の観点から、よろしくないという考えが主流になりつつある。

例えばある人ががんに関する検索ばかりしていたら「この人はがん患者かもしれない」とセンシティブな推測がされる可能性があり、性転換した人が前の性別と判定され続けるのは精神的にも苦痛だろう。リクルートが学生の就職辞退可能性を推測して問題になったのも記憶に新しい。

これまでの広告は推測に基づくものが中心だ。リターゲティング広告では、ネット上であるブランドのかばんを検索すると「そのブランドのかばんが欲しい人だ」と判定する。その商品を買っても広告が表示され続ける不快な経験をした人は多いだろう。

それでもビジネスとして成立するのは広告効果が高いからだ。広告業界は限られた予算の最適化で成立している。最終的には確率論の世界だ。購買した人の何十倍もを不快に感じさせている可能性があっても、購買者の確率が優先される。いまだにスパムメールがあふれているが、一定の確率で購入する人がいる限りはこれもなくならない。

広告であることを隠して宣伝する「ステルスマーケティング」もそうだろう。インフルエンサーが本当に紹介したい商品かどうかより、買う人の確率が高まればビジネスとして成立してしまう。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

そうした確率や推測ではなく、企業とユーザーがしっかりとコミュニケーションするアプローチも始まっている。答えのひとつが情報銀行だ。このコラムでも以前に取り上げたが、個人の情報を信頼のもとに預かり、適切に企業に提供する仕組みである。

情報銀行ビジネスの模索は様々な形で始まっている。電通グループのマイデータ・インテリジェンス(東京・港)は個人が情報提供に同意したかどうかを企業に代わって一元管理するサービスを始めた。森田弘昭取締役は「脱クッキー時代には、ユーザーが同意許諾したデータによるマーケティングが中心になるだろう」と語る。電通も企業側の広告代理だけでなく、個人の情報提供代理をする必要がでてきたと言えるだろう。

例えば「パティシェのスキルを身に付けて、パリで修業して東京で自分の店を開きたい」と考え、その情報を適切に公開する。専門学校や食品・旅行会社、金融機関などがその人の夢の実現の応援団として最適なサービスを競争しながら提案する――。ユーザーの情報が主導し企業が提案するというマーケティングコミュニケーションの時代がいよいよ訪れると期待したい。

[日経MJ2020年1月31日付]

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