データでオーダーメード消費 車も歯ブラシもつながる
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

2020/1/27付
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NIKKEI MJ

突然だが「テレマティクス保険」をご存じだろうか。テレマティクスとは、自動車など移動体との通信技術のこと。自動車の運転状況をクラウドにつなぎ、得られたデータを診断し、保険料に反映させる。当然、安全に運転する人に対しては減額する。

センサーを満載した試作の電気自動車をソニーはCESで発表した(1月)

センサーを満載した試作の電気自動車をソニーはCESで発表した(1月)

かつては専用の車載装置やカーナビが通信端末として試されたが、今は運転者のスマートフォンに専用アプリを導入するだけで診断できる。デロイトトーマツコンサルティングなどが数年前から開発し、国内外の自動車関連の保険商品が採用している。消費者一人ひとりの行動に沿った分析をした上で、価格やサービスをそれぞれ変える。そんなこれからのサービスを示すものとして注目されている。

思い浮かぶのが、1月に米国で開催された世界最大規模の家電関連見本市、CESだ。時計、冷蔵庫、電子レンジ、歯ブラシ、トイレ、さらには自動車と、消費者になじみ深い分野で新製品や試作品が数多く並んだ。

共通するキーワードは「コネクテッド」。すなわち「(インターネットで)つながる」だ。ソニーが展示して世界を驚かせた電気自動車の試作品「ビジョンS」は33ものセンサーを搭載し、車内外で刻一刻変化するさまざまな状況をリアルタイムに監視し、通信して判断を下す。

ブラウンが発表した電動歯ブラシ「オーラルB」は、やはりリアルタイムでスマホと連携。人工知能(AI)が磨き残しや力の入れすぎなどを指摘する。

多彩な製品群のいずれもが「つながる」ことで、消費者一人ひとりの行動と取り巻く状況を分析して診断を下す。単に自動車や歯ブラシ、家電製品を作って売るだけでないビジネスが可能になると見込んでいるわけだ。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

例えば、冷蔵庫内の食料品を監視して、少なくなった食材をアマゾンに発注するなどのサービスはすでに開発されている。いずれ、食品ロスを減らしたり健康な食事を推奨するアドバイスをしたり、さらには特価販売を教えたりするスマート冷蔵庫サービスも開発されるだろう。

われわれになじみの深い消費の場面でも、個人の行動の分析を通じて異なる商品やサービスが開発され、あるいは利用者ごとに価格を変えるサブスクリプション(定額課金)も生まれるだろう。

そこで問題になるのが、利便性や魅力的な価格と引き換えに行動がガラス張りにされ、企業のデータ利用に同意を求められるケースが急増すると予想されることだ。

もっと大きな問題も待ち構えている。行動データが収集されて総合的に「スコアリング」されることだ。低スコアな消費者と診断されれば、多くの人々が得られる便益を受けられないといった差別を被る可能性も出てくる。

中国ではAIによるスコアリングを駆使して、与信をはじめ多様な便益を変化させる「芝麻(ゴマ)信用」が人気だ。SNSでの発言もスコアリングの材料の一つだという。得られる便益が大きいから人気を博すが、低いスコアを付けられたら抜け出すのが大変だ。こんな「落とし穴」に備えなければならない時代でもある。

[日経MJ2020年1月27日付]

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