新しい渋谷をタダで楽しむ 絶景・アート…魅力再発見

東京・渋谷で商業施設が相次ぎオープンしている。展望施設や海外のスイーツ、おしゃれな雑貨。どれも心引かれるが「ちょっと高い」。財布を開けない新しい街の楽しみ方を探してみた。
注目は「渋谷スクランブルスクエア」(2019年11月開業)の展望施設「渋谷スカイ」。渋谷最高峰の高さ約230メートル。約2500平方メートルの開放的な空間で360度見渡せる。渋谷の名物のスクランブル交差点も見下ろせる。
ただ入場券はウェブ予約で大人1800円。無料で東京の景色を楽しめる場所はないか。調べてみると「東急プラザ渋谷」(19年12月開業)にありそうだ。17階の屋上テラス「シブニワ」に上る。
「おぉきれい」。東京タワーや新宿の高層ビルなど「ザ・東京」の夜景に思わず声を上げた。高さ約80メートル。目前にそびえる渋谷スカイに高さはかなわないが「渋谷の息づかいを楽しめる」と東急不動産の山田潤太郎さんは話す。
確かに程よい高さのため、街頭ビジョンなどの街の明かりや、車や人の動きなど、ざわついた渋谷の空気感が伝わってくる。街のパワーを感じられる。別の日に渋谷スカイも訪れたが、絶景は圧巻。でも、街は遠く、小さかった。

いつ来ても人が多い渋谷だが、憩いの場所はないものか。渋谷駅南側が穴場と聞き、18年9月に開業した「渋谷ストリーム」の前を流れる渋谷川沿いの遊歩道「渋谷リバーストリート」を訪れた。

かつては薄暗い印象だった渋谷川一帯を整備し、代官山方面に約600メートル続くエリア。散歩コースに最適で、天気が良いと日差しを受けた川面がきらきら。子供が遊ぶ芝生や野菜を栽培するスペースに、渋谷であることを忘れる。
目に留まったのが足元や柱の「24」などの数字。代官山方面に進むほど数が増えていく。渋谷ストリームの酒井あす菜さんに聞くと、同エリアは13年に地下化された東急東横線の跡地で、数字は当時の高架の柱の管理番号だそう。代官山エリアに向かって95まで続いている。
美術館に行かなくてもアートが楽しめる街にもなってきた。昨年11月に改装開業した「渋谷パルコ」の2階。「OIL by 美術手帖」はアート誌「美術手帖」が運営する現代美術のショップ。内容は約3週間ごとに変わり、鑑賞だけでも構わないそうだ。
フロアを歩くと、通路に描かれたボーダーが目を引いた。「スクランブル交差点をモチーフにシンガポールのアーティストがデザインした」(同店の中川小夜子さん)

「懐かしい」と思わず近寄ってしまったのが、旧渋谷パルコの外壁を飾っていた「PARCO」のネオンサイン。「P」「R」「C」が一文字ずつ館内にアート作品として展示されている。「ネオンがかわいい」と若い世代には写真スポットとしても人気だ。
渋谷スクランブルスクエアでは障害のあるアーティストの作品があちこちに。5階の柱には「時間の移ろい」、地下2階では6カ所に「ジャングル」をテーマにしたアートがある。店内に溶け込んでいるが、よく見ると作品のタイトルなどが付記されていて、発見する楽しさもある。
渋谷エリアで19年11~12月に開業した大型施設の店舗面積は計8万平方メートル以上。商業施設の開業ラッシュは一段落したが、宮下公園や桜丘エリアの開発は続き、渋谷の街はまだまだ変化の途中だ。つまり、今しか見られない景色も多い。それこそアートかもしれない。たまには渋谷散歩はいかがでしょうか。
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乾杯は古きよき百軒店へ

駅周辺が注目されるが、前回の東京五輪のころは渋谷といえば道玄坂。その中腹の「百軒店(ひゃっけんだな)」も渋谷の中心だったそう。かつての花街。今もネオン街の近寄りがたい雰囲気を残しつつ、個性的な飲食店が増えている。2017年開店のデンマーク発のビアバー「ミッケラー東京」代表のハミルトンさんは「きれいすぎない、特別な文化のある場所」と話す。古さと新しさが混在し、はしご酒を楽しむ姿も。もちろんお金はかかりますが、新しい渋谷を楽しんだ後、乾杯は百軒店で。
(井土聡子)
[NIKKEIプラス1 2020年1月25日付]
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