「テレビ」の意味が転換 スマホで視聴、広告の未来は?
奔流eビジネス(アジャイルメディア・ネットワークアンバサダー 徳力基彦氏)

2020/1/24付
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NIKKEI MJ

2020年代のマーケティングの変化を考える上で、1番大きなポイントになるのは「テレビ」の変化だろう。

NHK番組のネット同時配信が4月に始まる。見逃し視聴はすでにU-NEXTなど外部のサービスでも導入している

NHK番組のネット同時配信が4月に始まる。見逃し視聴はすでにU-NEXTなど外部のサービスでも導入している

今年は東京五輪開催も後押しとなり、NHKがテレビ番組を放送と同時にインターネットでも配信する「ネット同時配信」を実施する。計画に懸念が示され費用抑制が条件となるなど混乱もあったが、世界的に見ても日本が非常に遅れていた分野が一歩前進するのは大きいだろう。

2年前の平昌五輪で、試験的な同時配信としてカーリングやフィギュアスケートなどのネット視聴を体験した。テレビ受像機がないオフィスの会議室や自分の席で、リアルタイムにパソコンやスマートフォンで五輪を観戦できるのは新しい体験だった。

「テレビ」を見る、という行為は従来、「テレビ」の番組を、「テレビ」の電波を通じて、「テレビ」の端末で見る、という行為をストレートに表現していた。今後は同じ「テレビ」の番組を見るとしても、配信は電波とネットを選択でき、端末もスマホやパソコンを選べるわけだ。

実際、若い世代を中心にHuluやアマゾンプライムビデオなどの有料動画配信サービスを契約し、テレビだけでなくパソコンやスマホなど端末を問わずにドラマや映画を見る文化が定着しつつある。

特に台風の目と言える存在がネットフリックスだ。世界の契約者数が1億5千万を超え、有料動画配信サービスのトレンドを引っ張る存在として君臨してきた。昨年にディズニープラスが始まったため今後の苦戦も予想されるが、アカデミー賞にも独自作品が複数ノミネートされるなど存在感は圧倒的だ。

日本でも昨年、契約者数が300万を超え、「全裸監督」など日本向けの独自番組の制作を強化すると発表した。そのうえ影響が大きいのは、国民的人気アイドル「嵐」の活動休止に向けたドキュメンタリーをネットフリックス限定で配信することだろう。

ジャニーズ事務所のアイドルはネット上でほとんど活動していなかった。テレビの地上波でしか見ることが難しかった嵐が、ネットの動画配信サービスに活動を広げたインパクトは非常に大きい。若い世代からすると、嵐のドキュメンタリー番組もある意味での「テレビ」番組ではあるが、もはや視聴する端末は「テレビ」とは限らないのだ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。19年7月からはアンバサダープログラムの啓発活動とnoteプロデューサーとしての活動に従事。

この変化は企業のマーケティングにも影響する。若い世代がテレビ番組をリアルタイムで見ることが減り、テレビCMが若い世代に届かなくなったと言われている。

ネットフリックスには広告メニューがなく、広告主は契約者に広告を出せない。人気番組にテレビCMを露出して大勢の認知を獲得する手法に慣れた広告主からすると、非常に大きな変化がある。

電通が発表する「日本の広告費」の推移でも、今年はインターネット広告が地上波テレビ広告の金額を逆転するのが間違いないと見られている。今後はさらに、テレビを見る行為自体もネットへのシフトが進むことになる。

20年代は視聴者にとっても広告主にとっても、「テレビ」という言葉が表現するものが大きく変わる時代になることは間違いないだろう。

[日経MJ2020年1月24日付]

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