伊集院静「ミチクサ先生」(121)

伊集院静「ミチクサ先生」
2020/1/13付
情報元
日本経済新聞 朝刊
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傾きかけた冬の陽とともに夕刻の風が烏森界隈(かいわい)に寄せた。

屯ろする人力車の車夫がくゆらせる煙管(きせる)タバコの煙と汐(しお)の香りがした。

――汐の香りはええもんじゃのう。

子規は、故郷、松山の三津浜の海のことを思い出していた。

――母上も、律(妹)もどうしとるかの。

ポツポツと灯(あか)りが点り出し、車夫たちが一人また一人と賑わいはじめた盛り場へ消えて行く。

鐘の音がした。

金之助と女性…

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