がんばる理由はDNA
SmartTimes サムライインキュベート創業者 代表取締役 共同経営パートナー 榊原健太郎氏

コラム(ビジネス)
2020/1/10付
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最近は国内だけでなくイスラエルやアフリカなどでも起業家や学生などの前で話す機会がある。「なぜ、何のために、そこまでがんばれるのか」という質問を受けることが多くなってきたので、今回はそのことについて書きたいと思う。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

若い頃は「たくさん稼げる人になりたい」「自分自身の成長のため」など理由はいろいろあったが、サムライインキュベートを設立してからは難しい。

東北の起業家支援で登壇したときのことだ。一緒に登壇したスタートアップの方が「40歳を超えるとDNAが自分にもっとがんばれと言ってくる。だからがんばる」と答えているのを聞いて、納得できた。

私は明治から続く名古屋の「琴三味線屋」の4代目として生まれた。だが先祖を調べてみて実は5代目ということを知り、その理由でもある部分にDNAの一端を見つけた。初代から音三郎、喜三郎、喜好、征勝、そして私(健太郎)と続くのだが、父の征勝だけ「ちょっと違うな」という感覚を抱いた。

父の名前の由来を理解したのは後に訪れた鹿児島県の知覧特攻平和会館で、戦死した少年達から両親への数多くの手紙を見たときだ。一番目にした言葉は「征(い)ってきます」だった。「征」には敵を討ちにいくといった意味がある。

祖父の喜好は「史上最悪の作戦」とも呼ばれるインパール作戦で戦死している。そのとき父の征勝は祖母のおなかにいた。「征って勝つ」という意味が込められているのだろう。まさに戦時中に父は名付けられたのだ。寡黙な父だが、とても重いものを背負っていた。父親に会ったことのない人生を歩んだ父が、私の健康を願い、琴三味線屋を継ぐかどうかという話を一切せず自由に過ごさせてくれたことには感謝しかない。

こうして遡ってみて、以前より明確にわかったことがある。祖父の喜好が体験したような苦しみは二度と起こしたくないし、起こさない。そんな世界にすることだ。負のスパイラルを止め、世界の人々が健康で笑顔で好きなことを楽しめる幸福な明るい世界をつくること。ここに行き着く。

私個人が世界各国の一人ひとりに何かをしていくのでは時間がいくらあっても足りない。だからサムライインキュベートが「起業・事業創出支援」を起点に事業をして多くの雇用を生み出し、世の中にお金が巡っていくことで、新興国や発展途上国などの負のスパイラルを止めることが可能だと考えている。そして数十億人の幸福につながったとしたら、私にとってこれ以上ない喜びだと思う。

何のためにがんばるのか。皆さんもぜひ一度考えてみてほしい。先祖を遡って自分が受け継いでいるだろうDNAまで考えてみると、表面的なことでなく、自分の根底にある「がんばる理由」に気づけるかもしれない。

[日経産業新聞2020年1月10日付]

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