好対照なアパレルアプリ ユニクロ=店舗体験、GU=流行
読み解き 今コレ!アプリ フラー最高マーケティング責任者・杉山信弘氏
日本のアパレル業界をけん引する2つのブランドは、アプリでも存在感を放っている。フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、ともにファーストリテイリング傘下の「ユニクロ」と「GU」の両アプリは、ファッション関連アプリとして圧倒的なユーザー数を誇っていることがわかった。

2019年10月時点のファッション関連の主要アプリの中で、この2つは続く「MUJI passport」(良品計画)の2倍ほどの月間利用者数(MAU)を獲得しており、2ブランドの独走態勢が鮮明となった。1店舗当たりの利用者数で見ても2ブランドのみが1万人を超えており、アプリの利用規模の大きさがわかる。
ユニクロとGUの両アプリは、まさに店舗と電子商取引(EC)を持つブランドにとってはお手本のような存在だ。2つのアプリともに店舗検索、EC、会員証、ニュース・お知らせといった標準的な機能を備える。そのうえで各機能の関係性にそれぞれの特徴が見える。
まず共通点としては、両アプリともに最初の画面はオンラインストアに固定しており、店での販売よりECを重視したインターフェースとなっている。アプリを店舗の一機能としてではなく、新しい販売チャネルと捉えていることがよくわかる。
同時にオンラインストアでは多くのコーディネートと口コミを閲覧でき、カタログの役割も果たしている。起動して1タップで会員証を表示できる会員カードの機能や、クーポンやマイルの仕組みも備えており、来店頻度の向上にも寄与している。

それぞれのブランド特性に合わせてアプリの設計思想が違う部分もある。スタイリング閲覧の立ち位置の差が代表的だ。GUは若い女性をメインターゲットとしトレンドに即した商品を多く扱うだけに、スタイリングやコーディネートの重要度が高い。メインメニューに「スタイリング」という項目が置かれているのもうなずける。
一方、幅広い層に向けた定番商品が多いユニクロでは、メインメニューに「スタイリング」は設けていない。ユニクロIQというチャット型のレコメンドエンジンを固定で設置し、御用聞きのような形をとって、アプリの利用に慣れていないユーザーを支援している。店舗の体験により近いと言える。
店舗を訪れたことを伝えるチェックイン機能は両アプリともにあるが、入店後に使える内容はやや異なる。店舗内の在庫検索や店舗限定のチラシ閲覧など、ユニクロのほうが圧倒的に充実している。
トレンドをいかした商品展開にスタイリングの充実で応えるGUと、ECと店舗体験を限りなく近づけ総合的に支援するユニクロ。アパレルブランドのアプリでも、正解は一つではないということを示す好例だ。
[日経MJ2020年1月8日付]