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春秋

元日付のこういうコラムは、ふつうなら来し方行く末に思いをはせ、まずは新年をことほぐものである。だから当方も1964年、つまり前回のオリンピックイヤーの本紙縮刷版を読みふけり、56年前の正月の活気を思い出していた。けなげだったなあ、あの時代……。

▼しみじみとした気分が、カルロス・ゴーン被告逃亡のニュースで吹っ飛んだ。日産自動車に君臨しながら逮捕され、特別背任などの罪で起訴され、保釈を認められて公判を待っていた人である。あろうことか、遁術(とんじゅつ)を用いて出国に及んだらしい。元会長の肩書が泣く所業だ。日本の当局にとっても、これほどの恥辱はない。

▼「私は不公平さと政治的な迫害から解き放たれた」。なかなか口が達者なカリスマである。中東レバノンからの声明は、しかし、ようするに盗っ人たけだけしい。事件がガラパゴス司法の問題点を浮かび上がらせたのは確かだし、この人は今後もそれを強く訴えるはずだ。それでもその挙措、あまりにもさもしくはないか。

▼日本の世論はかえって、古い司法を守るほうに傾くかもしれない。ゴーン裁判が開かれなければ、いくつもの謎が残されるに違いない。元会長の逃亡は、そんな罪もはらんでいる。ため息をつきつつ64年の元日紙面を眺めれば、日産の全面広告が晴れやかに自動車立国をうたっている。この半世紀は、なんだったのだろう。

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