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春秋

ジャズの名曲「嘘は罪」(It's A Sin To Tell A Lie)の歌詞はなかなか辛辣である。「『愛してる』って本当なの/嘘をつくのは罪深いことよ/どれだけの心が傷ついてきたことでしょう/この言葉のせいで」……。甘いラブソングというより、不実を戒めるふうだ。

▼男女のあいだの嘘も困るが、社会全体にまき散らされる嘘――いわゆるフェイクニュースやフェイク情報は厄介きわまる。それ自体が人々を混乱させ、憎しみをあおるだけではない。世の中の困惑を見て取り、公権力が言論・表現の規制に乗り出しはしないか。そういう二次的な現象のほうが、あるいは深刻かもしれない。

▼すでにシンガポールでは、SNSなどでのフェイク拡散や情報操作を取り締まる法律が施行された。何が正しく、何が虚偽なのかを政府が判断するのだから怖い話だ。法規制は各国に広がる気配があるが、日本では総務省の有識者会議が政府の介入には慎重な報告書案をまとめるなど抑制的だ。まずは穏当なところだろう。

▼それでもフェイクの横行は、強権を求める風潮を高めかねない。そうなる前にネット企業は手を尽くし、デジタル空間を泳ぐわれらも知恵をつけたいものだ。「現代のメディア・リテラシーの本質とは、あいまい情報に耐える力である」(佐藤卓己「流言のメディア史」)。嘘は罪深い。心を傷つける。無知も同じだろう。

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