東南アで進む決済変革
SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏
東南アジアやインドは、消費市場をけん引する世代が日本とは異なっている。東南アジアは、デジタルネーティブと呼ばれる1980年代から2000年以降に生まれた世代の人口が、世界的にみて多い。

国連の推計によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の総人口6億5千万人のうち15歳から34歳の人口は2億1500万人で、全人口の3分の1を占める。これが日本では2800万人であり、全人口の2割にとどまる。
インドには4億4千万人ものミレニアル世代がいて、世界一である。
ミレニアル世代はSNSや動画プラットフォーム、ライドシェアなど、何をするにも「スマホオンリー」の消費生活が当然になっている。使いにくいと感じたアプリは一瞬で消去される。自分が口座を持つ銀行のオンラインバンキングも使わずに新興の送金アプリを使う。極端にデザインやUX(ユーザー体験)を重視する点が、その上の世代の発想とはかなり異なる。
だからアジアにはフィンテックサービスの提供余地が大きい。ミレニアル世代が人口ピラミッドの中心だからだ。
もはや意識すべきは「中産階級の人口の多さ」ではなく、新たな消費の担い手であるミレニアル世代の人口層だ。新しい階級クラスとして既存の金融機関だけでなく投資家からも注目され、恐れられる存在になっている。
スマホアプリを最重視し、クレジットカードを持たず金融機関から資金を借りたこともない。つまり「与信履歴を持たない」ミレニアル・ユーザーに対して、どんな与信が可能なのか。この問題を解決するとき、オンライン決済データは非常に重要になる。
若く収入が少ないミレニアル世代に後払いや分割払いのサービスを提供し、手が届かなかった商品やサービスを買う機会をつくる企業が急成長しているのは、この波に乗っているからだ。我が社もFinAccel(インドネシア)といった有望企業への投資や融資を通じ、この流れを応援している。
最近、各国のフィンテック経営者たちと会って話題になるのが「デ・グローバリゼーション」だ。既存グローバル勢力やアリペイなど新勢力に対抗する「純国産勢力」の台頭が、アジア各国で進んでいる。
インドでは政府主導の「UPI決済」が、月間10億回トランザクション、2兆9000億円の決済を生んでいる。タイでも国家主導のQRコードを使った決済「Prompt pay」が存在感を強めており、人口の約60%がユーザーだ。彼らの大きな特徴は、導入事業者(加盟店)にとって決済手数料が無料なことである。
創造的破壊を国家が主導している。決済業界のビジネスモデルに地殻変動が起きつつある。
[日経産業新聞2019年12月27日付]