アラフィフに学び直しを
SmartTimes インディゴブルー会長 柴田励司氏

2019/12/25付
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東京商工リサーチの調査によれば1~9月に希望退職や早期退職者を募集した上場企業は27社で、対象人員は1万342人に上る。10月以降の発表事例から推測すれば、リーマン・ショック後の2010年に記録した1万2232人を超える可能性が高い。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

かつて外資系企業で、いわゆる「リストラ」の支援をしたことがある。当時は希望退職を募ることそのものが珍しく、すべてが手探り状態。米国本社から1カ月以内の断行を求められ、日本法人の社長や役員、顧問弁護士らと奮戦した。

辞めることになる人へのケアや残ってもらう社員のモチベーション維持のため、一人ひとりと必死に向き合った。日米の役員が総出で社員全員と一対一で面談することにしたが、役員たちからは「どう話せばいいかわからない」「不用意な発言をしたくない」と訴えられた。突貫で面談マニュアルを作り、深夜まで練習したことを思い出す。

希望退職や早期退職の対象となるのは主として40代後半から50代の人たちだ。人生100年時代で、これで「引退」ということはない。新たなスタートを切ることになる人が大半だろう。これまで特定の会社で培った経験があるとはいえ、今後もそのまま使えるかは怪しい。どうすべきか。まずは、たっぷり休暇を取って身体と心を空っぽにした上で、気分新たに学び直しをした方がいい。

学び直しにあたり、教育訓練給付制度は助けになる。雇用保険を財源とするこの制度は昨年度に拡充されている。ただ、制度の目的は不足する領域の人員確保のための資格習得やスキルトレーニングに傾斜しているように見える。マッチする人もいるだろうが、社会人経験が20年以上のアラフィフのみなさんの次のステップを考えるのに必ずしも最適ではないように思う。アラフィフのみを対象とした場があった方がいい。

アラフィフ対象の学び直しというと、かつては意識改革系のものばかりだった。「あなたの市場価値は年収1000万円ではなく400万円だ。己の現実を直視せよ」。これを徹底的に意識させるものだった。その現場を見せてもらったことがあるが、とても辛い気持ちになった。過去を無理やりご破算にするアプローチだからだ。過去の経験を完全に消し去ることはない。経験を抽象化して応用できるようにすればいい。

私が標榜するものは違う。「心のもちよう」を整え、どんな仕事をするにしても必要となる「ポータブルスキル」を徹底的に鍛える場だ。トレーニングを重ねた上で、最後に卒業認定をする。そこでは「トライアウト」の場を設け、経験豊富なアラフィフを必要としている企業や団体が審査する。良いと思う人はスカウトしてもらう。企業や団体の支援を受け、こんな学び直しの機関を立ち上げられないかと考えている。

[日経産業新聞2019年12月25日付]

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