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OMOでも顧客体験カギ

新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

日本でも近年はやり始めた11月末の一大セールイベント「ブラックフライデー」。そこからスタートする1カ月間のクリスマス商戦では、米小売業界の年間売り上げの約2割がたたき出されるといわれる。また、今年11月11日の中国の「独身の日」では、アリババの取引額が1日で4兆1000億円を超えた。

オンラインとオフライン双方で米中の個人消費が堅調な中、小売業界が激変している。オンラインから始まったアマゾンはオフラインの実店舗までその範囲を広げている。

2018年に一般利用が始まった無人コンビニ「アマゾン・ゴー」は現在18店舗開店し、21年までに3000店舗に拡大すると言われている。レジが無く、私も初めは商品を次々にポケットに入れてただ出ていくのは万引きをしているような錯覚に陥った。だが店を出てアマゾン・ゴーのアプリに決済済みのレシートが届くまでの購買体験は従来のコンビニのそれではない。アマゾンは店舗内の無数のカメラから購買行動を分析し、社会実装する実験を繰り返している。

かつてはEC(電子商取引)やウェブサイトをはじめとしたオンラインを補完的なツールとして、主流のオフラインである実店舗の購買活動に活用する、オムニチャネルやO2O(Online to Offline)という言葉があった。

いまはOMO(Online merge Offline)といってオンラインとオフラインをチャネルで分けて考えず、それが完全に融合された世界となってきている。肝は顧客がオンとオフを意識せずに好きなように購買できることだ。

このOMOという考えを16年に"ニューリテール"というコンセプトで打ち出したのが、アリババの創業者ジャック・マーであり、それを形にしたのが「フーマー」というOMO型のスーパーマーケットだ。中国で150店舗以上を展開し、店舗は当然無人レジとアリペイによる決済。オンラインで注文しても注文店舗から半径3キロメートルまでなら30分以内に配送してくれる。

店を訪れて驚いたのは、店内の客の横でフーマーのユニホームを着た店員がひっきりなしにオンラインで注文された商品を配送用のカゴに入れている風景だ。いけすから生のエビや魚も入れる。そのままベルトコンベヤーでバイクドライバーのもとに運ばれ配送される。彼らは地方出身の低賃金労働者であり、フーマーは最新のテクノロジーと低賃金労働者の人海戦術でOMOを実現している。

しかし小売りの世界が激変しても、常に変わらないのはよりよい顧客体験を提供する勝負だということだ。シリコンバレーで出会った化粧品オンライン販売を手掛ける起業家の「ポイントやキャッシュバックは大嫌いだ。本当はイマイチなのにポイントがあるから買う、という妥協の産物でしかない。大事なのは本当にいい商品をとにかく早く届ける、それだけだ」という言葉は至言だろう。お客様にとって本当に大事なことを突き詰める、彼の潔い姿に学ぶことは多い。

[日経産業新聞2019年12月24日付]

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