大企業と組み世界へ
新風シリコンバレー WiL共同創業者兼CEO 伊佐山元氏

2019/12/17付
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私が日本の大企業と世界のベンチャーの橋渡しを支援する組織、WiLをシリコンバレーに創業した当時、日本のベンチャー投資の年間規模は、やっと1千億円を超えた頃だった。同じ時期の米国でのベンチャー投資は7兆5千億円、実に75倍だった。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

その後、日本では政府系のファンドの躍進などもあり市場規模は4千億円になり、米国の15兆円に対し37倍に縮まった。規模の拡大に伴い日本でも多くのベンチャー企業が生まれ、その認知度やメディアでの露出は増え、優秀な人材がベンチャー志向になる機運はますます強くなった。

あまり明るい経済ニュースが多くない中で、国内のベンチャーが盛り上がることは喜ばしいが、大半のベンチャーがいまだに国内市場を対象としたビジネスをしている"ガラパゴス"である現状は改善が必要だ。日本発グローバルというテーマは、ベンチャー業界の永遠の課題ではある。

海外市場でも活躍するベンチャーが増えなければ、大きな産業にはならないし、大きな付加価値も獲得できない。最近はベンチャー企業の海外展開については、日本なりの勝ち筋があるように考えている。

シリコンバレーのベンチャーのように、自力でグローバルな経営チームを採用して、大量の資金調達をして海外展開できれば、それは理想だ。しかし日本のベンチャーにとって、人材も資金も国内依存が強い状況ではシリコンバレー型のグローバル展開は難しい。

他方、世界を見渡すと、かつて世界の時価総額ランキングを独占した日本のメーカー、通信会社や自動車などは米IT大手に押されながらも、そのプレゼンスを維持している。そこで考えられるのは日本の大企業が過去に築いたグローバルチャネルとその経験を、今後ますます増えるベンチャー企業に転移・共有するという取り組みである。

弊社の投資先であるソラコムという通信系のベンチャーは、創業して2年は自力で国内だけでなく海外で事業展開をしていた。さらなる拡大と成長のスピードアップを図るために、大手通信会社に買収され、その大きな資金とインフラの活用で世界展開を強化するという判断をした。ベンチャー企業としての自治権を維持する一方で、大企業の豊富な資源を活用した結果、事業は順調に拡大し、明らかに世界中での知名度や評価は高まっている。

この5年間は大企業のベンチャーへの出資が活発であったが、今後は買収を通じた、ウィンウィンの構造は増える必要があると考えている。米国のベンチャーの80%は買収されているが、日本はまだ過半以上がIPO(新規株式公開)している。相変わらず小型の上場が多く、世界に出ていくという夢も遠くなるという悪循環に陥っている。

2020年以降の5年は大企業とベンチャーのアライアンスを増やし、大企業はベンチャーのスピード感と発想力を学び、ベンチャーは大企業のグローバルなネットワークとリソースを生かし飛躍するという具体例を増やしていきたい。

[日経産業新聞2019年12月17日付]

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