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春秋

寄生虫を落としたり、体を冷まそうとしたりしていると聞けば、なるほどと思う。動物が泥の中に転がり、身をよじるあの行動のことだ。泥浴びのための場は沼田(ぬた)と呼ばれる。この「ぬた」が「のた」に転じてできたのが、「のたうち回る」という言葉である。

▼のたうち回る動物の代表はイノシシだ。昔から身近な生きものだったものの、都市化が進んで縁遠い存在になってしまった――などと思い込んでいたが、このところ都会への「進出」が相次いでいるようだ。東京・足立区では先日、河川敷で大捕物が繰り広げられた。栃木県足利市や高松市では、人が襲われる被害が出た。

▼農業への影響も深刻だ。丹精込めて育てた作物を、収穫を前に根こそぎ荒らされてしまってはたまらない。なにしろイノシシの数は90万頭近くにのぼり、この30年間で3倍以上に増えたという。有効な対策は捕獲・駆除しかない。昨年度の捕獲数は約60万頭だった。生息数に比べると大きな数字で、切ない気持ちにもなる。

▼過疎化や里山の荒廃、エサの不足など背景は様々あろう。「人間による餌付けが引き金の可能性もある」と、山形大准教授の江成広斗さんが本紙で指摘していた。人間と野生動物の間には本来、越えてはならない一線があるはずだ。踏み出してしまうと互いが不幸な、のたうち回りたくなる結果を生んでしまうこともある。

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