春秋

2019/12/11付
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ドーピングは大昔からあった。アフリカ南部の原住民が祭礼のときに飲んだ「dop」なる酒が起源とか、古代ローマで馬車競技の馬にアルコールを飲ませたとか、ものの本にはいろいろな話が出てくる。現代に目を転ずれば1960年ローマ五輪での出来事が有名だ。

▼このときは自転車競技の選手が興奮剤を服用してレース中に転倒、死亡する騒ぎとなった。事故を機にオリンピックでドーピング検査が始まり、いまや禁止薬物も多種多様である。その作用はしかし、つまるところ興奮、高揚、攻撃性向上、筋肉増強……。不正をはたらく人々の欲しいものは、どんな時代でも変わらない。

▼世界反ドーピング機関(WADA)が、ロシア選手団を東京五輪・パラリンピックなどから締め出すことを決めた。昨年の平昌大会からも排除されたロシアだが、こんどはまた罪状が重い。資格停止処分解除の条件としてWADAが受け取ったデータに、大量の改竄(かいざん)や削除が見つかったという。なんという非行の上塗りか。

▼背景には、旧ソ連時代から染みついた国威発揚のスポーツ観があろう。ナショナリズムという名の興奮剤を、たっぷり服用するとこんなことになる。心配なのは真面目にやっている選手たちだが、平昌と同じく個人参加は許されるという。思えば国旗なし、国歌なしの場面も悪くなかった。スポーツ本来の姿かもしれない。

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