春秋

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2019/12/4付
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明治・大正期に日銀本店本館や東京駅の赤れんが駅舎を設計した辰野金吾は、耐震建築の草分けでもあった。地震の多いイタリアの視察もしている。没後100年を記念して都内の日銀貨幣博物館が開いている特別展からは、彼が現地で詳細な調査をした様子がわかる。

▼訪れたのはナポリ湾に浮かぶ火山島、イスキア島だ。各種の石造の建物や、部材をボルトで結合した構造などを図解しながら記録した。だが、辰野の評価は高くなかったという。地震に十分耐えられるか、疑問に思ったのだろう。1896年(明治29年)に竣工した日銀本館の設計は、こうした地道な研究がベースにある。

▼当時はまだ珍しいコンクリートの土台をつくることにした。石積みを基本に、高い場所はレンガを多用して軽量化も進めた。こうした耐震性の向上が奏功して関東大震災でも倒壊せず、その2日後の月曜から日銀は窓口をあけて営業を継続。一部を焼失しながらも立ち続ける建物の姿に勇気づけられた人もいたことだろう。

▼もっとも昨今の日銀は、どっしり構えているのが難しいようだ。金融政策では、企業の投資を引き出すためだがマイナス金利という奇策に出た。その拡大は銀行収益をさらに悪化させかねない。本館は6月に免震工事を終え、金融システムの安定にも一層知恵を絞ってほしいところだ。辰野のような熱心な研究を期待する。

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