ベンチャー 負けない経営
SmartTimes セントリス・コーポレートアドバイザリー代表取締役 谷間真氏

コラム(ビジネス)
2019/12/3付
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2019年は11月7日現在で72社のIPOが承認されたが、このうちベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達でIPOに成功したのは20社程度にすぎない。私は数社のIPOを目指すベンチャーに関与しているが、増資による資金調達が主要な業務で、成功の一歩と考えているベンチャー企業は研究開発型の1社のみだ。これまで私が関与しIPOした企業も、VCに依存したことはない。

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開

1971年生まれ。京大卒。公認会計士。2002年にIPO支援コンサルタントとして独立。07年から上場企業の経営者を務め、11年からシンガポールでも活動。13年にIPOビジネス再開

IPO業界とベンチャー業界は深い関係性はあるが、全く別の業界だ。私は黒字経営を前提としたIPO業界で活動しているため、ベンチャー業界の常識には違和感を抱いている。

研究開発型、技術開発型ベンチャー企業でなくても先行投資を行い、赤字経営の中で企業収益の増加を目指す戦略が多い。そのため増資を中心とした資金調達が不可欠となっている。この戦略は事業計画が進まなければ、時間的制約を受け、資金ショートを起こすリスクがある。ギャンブル的経営とさえ思える。

これらは失敗を許容するシリコンバレーのものであり、日本は失敗した経営者に優しい社会とはいえない。VCは優先株や投資契約でリスクを軽減しつつ、ギャンブルであることを理解して投資しているので問題はないと思うが、ベンチャー経営者側の理解や知識があまりに乏しいケースが多い。もしギャンブルならば、事業計画が失敗に終わった場合の撤退シミュレーションは必須なはずだ。

ベンチャーのリスクを認識した赤字経営は否定しないが、私は負けない経営すなわち時間的制約を受けない存続可能な経営が好みだ。負けさえしなければ、勝機はいずれ訪れる。

負けない経営を志向するベンチャー企業は、どのような資金調達で成長すべきか。企業経営で最も優先すべき資金調達手段は売り上げだ。これはスタートアップも同様。リスク回避したスキーム構築で投資負担を負わずとも収益を確保する方法はある。このようなプロセスで経営者のビジネススキルも磨かれていく。

一定の収益を確保すれば、成長加速に資金が必要となっても金融機関から融資が可能となる。また、シナジー効果のある事業会社への増資は検討の価値があるが、それでも定量的なシナジーを算定し、持ち分の減少に見合う企業価値の向上が期待できるかを意思決定の基準とした方がよい。

私は、負けない経営を志向するベンチャー企業が資金調達のため増資をするのは、多額の新規事業への投資で赤字となることが想定され、金融機関からの借り入れが困難となる場合に限るべきだと考えている。

単なる資金ショートはリストラやリスケを断行すべきであり、増資で乗り切るべきではない。ベンチャー企業は「負けない経営」という選択肢も視野に入れ、自社の経営スタイルに合った成長を遂げてほしい。

[日経産業新聞2019年12月3日付]

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