春秋

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2019/11/29付
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1本500億円、いや700億円はくだるまい――。4年あまり前、こんな話が飛びかっていたのを思い出す。東京五輪・パラリンピックで使う新国立競技場の、例の当初案にあった巨大キールアーチだ。「本」で数える長い物は鉛筆やニンジンのみにあらずと知った。

▼ザハ・ハディド氏がデザインしたあの案はそれやこれやで整備費が膨らみ、2500億円を超すといわれた。世間の反発が強まって、計画の白紙撤回に追い込まれたのが2015年の7月だ。ああ、そんなこともあったなあ、と記憶が薄らいでいる人も多いだろう。新たに設計されたスタジアムが、あす正式に完成となる。

▼ザハ案よりも1000億円ほど安くあがったそうだ。見た目も品が良い。環境にやさしい。障害者への配慮がゆきとどいている。などと結構な評判である。まずはおめでたい竣工だが、さて、華やかな祭典が終わったあとのことは具体的に決まっていない。政府は今年中にまとめる予定だった計画を来秋以降に先送りした。

▼運営権を民間に売って収支をやりくりするという。しかし開閉式の屋根も可動席もないからどこまで儲(もう)かるか。トラックを取り外す方針にも異論があり、将来像はあやふやだ。負の遺産のことを「ホワイトエレファント」と呼ぶ。神宮の森に巨象が1頭……。どうかスタジアムを「頭」で数える事態とならぬよう願いたい。

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