幸福のための優先順位
SmartTimes サムライインキュベート創業者 代表取締役 共同経営パートナー 榊原健太郎氏

2019/11/27付
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皆さんの会社はどんなビジョンを掲げているだろうか。自社のサービスを通じて、世の中をより豊かにしようとしている会社がたくさんあると思う。弊社は「全人類がそれぞれの幸福で満たされる世界に」を掲げているが、最近はその幸福を満たす順番はどうすべきなのかを考えている。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

1974年生まれ、関西大学卒。大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)入社。08年にIT起業家の育成支援をするサムライインキュベートを創業。

弊社は設立12年目だが、過去に私自身が優先すべき順番を間違い、大きな危機をもたらしてしまったことがある。そのときまで自分の中で幸福にしていく対象の優先順位はこうだった。まずは自分自身のやりたいことを実現する。次に弊社でいうと起業家、投資家、事業会社というお客様。次いで自分の家族、続いて会社のメンバー。最後に結果的に幸せを届けたい株主の方々。そう考えていたが、これが良くなかった。

きっかけは2014年にイスラエルに進出し、私自身が結婚したことだ。当時の自分が一番したいことはイスラエル進出で、家庭や日本を託した会社メンバーを顧みずに猛進してしまった。家庭の亀裂が大きくなり仕事に集中できない状況を生み、会社の業績も大きく低下して次々にメンバーが辞めていく事態を招いた。そのとき辞めた1人に言われた言葉は今でも忘れない。「健さんって、人に興味ないですよね」

それから数年、危機にひんした頃に入ってくれたメンバーたちと構造改革を実施して突き進み、前年度は過去最高の売上高と営業利益を達成し、見事なターンアラウンドができた。プライベートでは週末に岐阜で暮らす妻子のもとに帰宅し、家族で過ごす時間を何より大事にしている。

そんな経験を経た今だからこそ、思うことがある。確かに過去最高の業績は生み出せたが、この結果は圧倒的にメンバーたちが日々本気で取り組んできた努力のたまものだ。その姿は、かつて大切にすべき人たちを顧みなかった自分の姿に重なって見える。人生には仕事に100%以上を費やしていればいいときばかりではない。つまり、この結果は継続的に生み出せるものではないはずなのだ。

今は、こう考えている。自分と自分の家族、そして会社のメンバーとその家族の幸福がベースにあり、次にお客様、そして株主の方々だ。1人でできることには限界がある。だからこそ自分だけでなく家族や会社のメンバー、家族が幸福な状態でなければ「それぞれの幸福で満たされる世界」は成し遂げられない。

自戒を込めて、自分の周りの人々を幸福にできない起業家が世界中の人々を幸福にすることはできない。間違った優先順位で家庭の雰囲気や会社の業績を悪化させる起業家を見かけることが増えてきた。皆さんも自分自身も含めて家族や会社メンバー、その家族は幸福か考えてみてほしい。そして、ぜひ会社のメンバーと話し合ってほしい。幸福な世界にするために。

[日経産業新聞2019年11月27日付]

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