電力網の未来 深刻な疑問
新風シリコンバレー 米インタートラストテクノロジーズマネジャー フィル・キーズ氏

コラム(ビジネス)
2019/11/26付
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2019年10月にシリコンバレーを含む北カリフォルニア州における企画的な大規模な停電は大きな激論を起こした。ハイテク業界を代表するシリコンバレーで電力が得られないという皮肉な状態が世界で注目された。しかし、この大停電はカリフォルニア州がめざしているクリーンエネルギーの未来に深刻な疑問を呼んでいる。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

大型停電の背景は、毎年秋に起きる暴風の天気がある。

通常、シリコンバレーなどの近辺の風は、海の方向から吹くので湿度が高く山火事を起こす可能性が比較的に低い。だが、秋の暴風は内陸方向から吹くため湿度が低い。この暴風に加え、通常は夏や秋に雨が少ないカリフォルニア州の乾燥された植物が組み合わせることで、大規模な山火事が頻繁に発生することにつながる。

例えば、この間にハリケーン1級並みの速度になる暴風も発生した。こうした暴風の場合、飛び火が影響する地域は3キロメートルくらいに達するという。

暴風は電力網にとって危険だ。18年11月の暴風による北カリフォルニア州パラダイス市で起きた大規模な山火事が電線が落ちたことの発端となった。電力網を運営していた中・北カリフォルニア州をカバーをするカリフォルニア州の最大電力事業者、Pacific Gas & Electric社(PG&E社)は、この山火事によって予備倒産を宣言することを決めた。

新たな山火事を避けるため、PG&E社は19年10月の暴風予報に対し、北カリフォルニア州内の限定した地域で大型停電をすることを決めた。この記事の執筆時点で、同社は2回の大型停電を実行した。この2回の停電は約109万人に影響したいう。

私には影響はなかったが、私の周辺では3日間ほど電力がこなかった人がいる。地方ニュースの報道によると、停電の街では信号が止まったり、インターネットや携帯電話接続が落ちたり、牧場や畑の機材の動作ができなかったりといった被害もあった。レストランや食事の材料を販売する店舗では冷蔵庫に入った食べ物が腐り、ある街ではこの食べ物を処分するためのゴミ処理所を臨時に設けたという。

私の周りでは、ハイテク企業に勤めているのに電力がないことで、「まるで発展途上国に住んでいる」といった声が頻繁に耳に届いた。一方で大部分の人々は、山火事によって死亡するといったことを避けるなら、大型停電に同意ができるという意見だ。

現在のPG&E社が運営する電力網は弱く、強化することが必要なのは明らかだ。しかし、カリフォルニア州政府がめざす電動自動車を普及させることや、天然ガス採用を減らすことを含む低炭素社会をめざすという目標の達成には、電力網の重要性が今以上に高まる。現在の厳しい電力網の状態から、21世紀の経済環境に必要な電力インフラを整備していくことは、カリフォルニア州政府と産業界にとって重要な問題となっている。

[日経産業新聞2019年11月26日付]

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