TikTokが政治の渦中に 国の検閲やデータ利用に懸念
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

2019/11/25付
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NIKKEI MJ

15秒ほどの短い動画を楽しむ動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)が大人気だ。中国のバイトダンスが提供し、日本では2017年にサービスが始まると月間利用者が昨年には950万人に成長した。総務省の19年の調べでは、10代の利用者が4割近くと突出して多い。世界では5億人を超え、トップを争う人気アプリだ。

中国発のティックトックは利用者データの管理を巡り欧米で議論を呼んでいる

中国発のティックトックは利用者データの管理を巡り欧米で議論を呼んでいる

このティックトック、「ユーチューブ」をはじめとするSNSがそうであるように、利用に歯止めがかかりにくい、社会的に不適切な内容の投稿がある、などと指摘される。インドでは「性的な内容」の投稿が問題視され、短期間ながらダウンロードが法的に禁止された。

バイトダンスは低年齢層を意識し、利用を制限したり監視を強化したり、さらには利用者の家族も交えて「安全な利用」を呼びかけたりしている。健全性をアピールするが政治に巻き込まれている。

伏線は電話番号やメールアドレス、地理情報など個人データを過去に収集しているとされたことだ。米連邦取引委員会(FTC)は13歳未満の青少年のプライバシー保護を定めた「児童オンラインプライバシー保護法」に抵触すると指摘。訴訟となり、6億円超の和解金の支払いと対策の実施が決定したばかりだ。

事態を深刻にしているのが、中国の事業者がティックトックを開発したことだ。米共和党の実力者であるマルコ・ルビオ上院議員は、政治的にデリケートなコンテンツを検閲する目的で中国政府がティックトックを利用していると述べる。議会上院での公聴会でも安全保障上の脅威だと共和党の議員が手厳しく指弾し、昨今の厳しい米中関係が持ち込まれた格好だ。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

一方、英メディア「ガーディアン」はティックトック内部の運用指針を入手し、中国国内と外部とを分けずに投稿に適用していると指摘した。つまり、香港やチベットなどの独立運動に触れるようなデリケートな投稿を非掲載とする判断が、国内はもちろん世界中の投稿にも及んでいるのではないかというわけだ。

中国ではこの種の事業が政府の厳格な検閲の下にあることは広く知られている。バイトダンスは昨年、2千人ものコンテンツ管理者を採用したが、共産党員を優先的に採用するよう政府に義務づけられたとする情報もある。

利用者データは中国で管理していないなど、バイトダンスは懸念の打ち消しに躍起だ。どうやら第2の「ファーウェイ問題」、つまり米国の政治的な標的になろうとしているようだ。

実際のところ、バイトダンスの検閲体制が諸外国での表現の自由に抵触するか即断はできない。ガーディアンも指摘するように、アルゴリズムによって利用者の趣味や嗜好に合った投稿を表示するため、政治的な意思で非表示なのか単に嗜好に合わせたためなのか判別が難しいからだ。

「プラットフォーム」と呼ばれる大手IT(情報技術)企業へのいら立ちを政治家らが募らせるのには、こうした不透明性も大きそうだ。中国企業であるか否かを問わず、影響力の大きい事業の運用指針やアルゴリズムについて、透明性を求める声が一層強くなることは避けられない。ましてや個人データへの国家によるアクセスの是非は、大きな社会課題になるだろう。

[日経MJ2019年11月25日付]

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