春秋

春秋
2019/11/22付
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「令和」発祥の地、福岡県の坂本八幡宮には平日の午後なのに、参拝者の列が絶えなかった。大宰府政庁跡の奥に立つ。長官でもあった大伴旅人の邸宅の跡といわれ、天平時代、サクラならぬ「梅を見る会」が催された場所である。あるじをはじめ計32人が歌を詠んだ。

▼旅人を上座にして左右に並んだ役人らが、次々に歌の興趣を引き継ぎ、取り込む。歌群は万葉集の中で、小品のようにキラリ光っている。国文学者の伊藤博さんは「互いは互いの関連において呼吸し、そして輝いている」などと評した。「三十二人が相継(つ)いで詠をなし、乱れぬ体系を完結した。これは驚くべき営みである」

▼こんな風雅なうたげと比べるのも気が引けるけれど、平成から令和へと移りゆく時代の「桜を見る会」の何となまぐさいことか。首相が招待者の選定に関与していたことを認め、さらには夫人の推薦者も参加していたらしい。首相のこれまでの説明がほころびを見せたかっこうだが、ほころぶのは花のつぼみで十分である。

▼招待者1万5千人中、本来、招くべき各界の功労者は半数以下。残る大半は自民党や高官らの推薦枠というから、会の趣旨を逆手にとり、先生方の活動のために乗っ取ったようなものかもしれない。「これは驚くべき営みである」。モリカケのように長引くのはご免だ。憲政史上1位に恥じぬ説明責任を果たすべきだろう。

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