春秋

春秋
2019/11/19付
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この週末、公開中の映画「宮本から君へ」の客入りは上々だった。人生に不器用な若者が、ときに感情をむき出しにして、ぶつかり合う。とかくクールに振る舞うことがもてはやされるご時世だ。その対極にある主人公の愚直な生きざまが、共感を得ているのだろうか。

▼この映画、公開までに曲折があった。脇を固める個性派俳優が今年の春、麻薬取締法違反容疑で逮捕されたのだ。制作側は、改編や追加撮影をせず、有罪判決が確定した俳優の登場シーンをそのまま上映した。「裁くのは法で、作品ではない」との立場だ。その結果、内定していた国の助成金が取り消される憂き目にあう。

▼一方、NHKの対応は迅速だった。大河ドラマ「いだてん」で、この俳優に代役を起用し、撮り直した。有料動画配信サービスでも、過去の出演作品の配信を停止した。「受信料で成り立っている以上、容認できない」と幹部は説明した。犯罪容疑のある出演者を、魅力的に映すべきではない、との放送基準があるという。

▼今回も同じことが繰り返されそうだ。年明けの放送が迫る大河「麒麟(きりん)がくる」に出演する俳優、沢尻エリカ容疑者が合成麻薬所持の疑いで逮捕された。局は上を下への騒動だと聞く。そのうち出演者に薬物検査を求めるようになるのか。あながち冗談とも言い切れぬ映像作品と芸能界をめぐる昨今の危機管理の趨勢である。

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