自然災害 AIで備える
新風シリコンバレー SOZOベンチャーズ創業者 フィル・ウィックハム氏

コラム(ビジネス)
2019/11/19付
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自然災害に関する不安は全世界共通となっている。特に何種類もの大規模な自然災害を経験している日本は、世界に対して天災への備えを教えることができる「災害対策先進国」とみる人もいる。今夏の台風による水害、被災された皆様ならびにそのご家族の皆様には心よりお見舞い申し上げます。千葉では電力の復旧に2週間もかかり、北陸新幹線の復旧にも時間を要するのを見るにつけ、災害対策の大切さを痛感する。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

ベンチャーキャピタリスト教育機関のカウフマンフェローズの会長。データ解析やフィンテック、クラウドなどのIT(情報技術)のスタートアップに投資するSOZOベンチャーズを2011年に設立。

時にスタートアップは、自分の経験から生まれ、世界を良くしたいと思う強い信念から創り上げられる。ワン・コンサーンの創業者のアフマド・ワニ氏はインドのカシミール地方出身で、彼自身2005年の大地震の経験がきっかけで、スタンフォード大学院での地震の研究の為に渡米した。

ところが14年にカシミールに一時帰国した際、豪雨に遭遇した。500人以上の死者が出たカシミール大災害だ。ワニ氏自身も、横にある家が次々と流されていく中、自分も家もいつ流されるかもしれない、生きるか死ぬかわからない状況を屋上で1週間過ごした。ワニ氏のこの体験が、単なる研究ではなく"実際に人を助けるようなことをしたい"、"世界をより良くしたい"と思いを強くし、ワン・コンサーンの起業へと突き動かしたのだ。

人工知能(AI)にはいろんな活用事例があるが、多くの人にとっては漠然とした遠くの世界のように捉えられているように思う。AIにより"人間の仕事がなくなる"と話題に上がることもあるが、シリコンバレーでは地道で人間の生活そのものに大きな影響を与えるようなAI活用の事例も出てきている。

ワニ氏が強調するのは、現在の多くの問題は多面的で複雑に連関しており、最新のテクノロジーこそがその問題を実際に解決できるという点だ。具体例として、現在の巨大なインフラ網を考えると、大規模の災害の影響は特定の建物や地域だけに対する影響を測定してもほとんど意味がなく、広範囲の多種・大量のデータを加味して分析していくことが不可欠になる。

ワン・コンサーンは特定地域に対して災害の影響をミクロの建物、そこに関わる人の単位で、それぞれがつながった電力、上下水道、道路などに対する影響を統合的に加味した災害予測を行うことができるデータサービスをAIとマシンラーニングの技術を活用して提供している。同社のサービスを使うことで自治体や企業は事前の災害対策の準備を備え、より適切な災害予測と防災・減災システムの構築が可能になる。

実際にワン・コンサーンの技術は熊本市で導入が進む。16年の地震災害や18年の水害などの経験を踏まえ、災害への対策が急務となっている。同社が提供する防災対策・対応プラットフォームを既存のシステムと併用することで、熊本市における防災対応力を従来よりも向上させようとしている。シリコンバレーの信念と技術が日本にも届き、それが世界の災害対策モデルとなると信じている。

[日経産業新聞2019年11月19日付]

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