春秋

春秋
2019/11/17付
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あの慣習はいつ生まれ、いつ消えたのだろう。「お砂糖、いくつ?」。高度成長期あたりの映画やテレビドラマに、喫茶店のテーブルを挟んでアベックの女性が相手に尋ねるシーンがよくあった。男はたいてい「2つ」。彼女は角砂糖2個をカップに落としてやるのだ。

▼実際にそういう光景を見た覚えもある。角砂糖がグラニュー糖に変わっても「いくつ?」はしばらく続いた。「2つ」といえば山盛り2杯だったから、往時の砂糖の消費量は……と思って調べてみたら、やはり昨今の比ではない。いまは1人あたり年間15キログラム前後なのが、1970年代前半の日本人は倍くらいとっていた。

▼「2つ」どころか「3つ」でも「4つ」でも平気な国が、しかし世界には少なくない。成長著しいアジアはその典型だ。昭和の日本と同じく、砂糖の消費量の伸びは国の勢いと関係があるらしい。とはいえ健康問題も深刻だから、タイやフィリピン、マレーシアなどの政府は甘い飲料などに相次ぎ「砂糖税」をかけている。

▼ダイエット志向が定着したわが方では縁遠い話だろう。カフェで眺めていると、コーヒーに砂糖など入れないブラック派がじつに多い。それでも糖質があれこれ気になる日本人なのだ。「おいくつ?」。デートでこう聞かれて、緊張した男が「ハイ、28です」と答えた――。こんな笑い話が通じた時代が、懐かしくもある。

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