春秋

春秋
2019/11/15付
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40年前のことである。大学受験に向け、通信教育大手の小論文講座を受けた。文中に「奈落の底」という言葉を使ったところ、返ってきた答案には波線が引かれ、「どういう意味でしょうか?」と朱書きされていた。言葉の意味そのものが分からない、との指摘だった。

▼「添削はアルバイトでやっているから、バラツキが大きいんだよ」。真偽は不明だが、通っていた高校の教師はこう解説してくれた。同じような不安を、いまの高校生も抱いているにちがいない。来年度からの共通テストで始まる国語と数学の記述式問題について、採点の公平性や客観性への疑念が、一段と高まっている。

▼冒頭の極端な例はともかく、共通テストでは50万人もの答案を短期間で採点しなければならない。作業は民間に委託される。アルバイトも必要だろうし、採点のぶれも心配だ。国会での追及が続くうち、文部科学省は「2次試験を門前払いする際の判断材料には使わないように」と言い出した。もう何だかよく分からない。

▼英語民間試験の見送りに続く一連の騒動の中で、現役の高校生たちが新制度に反対する会見や署名活動を行っている。意見を堂々と主張し国や行政にぶつける。これまであまり見なかった光景に思える。主体性や社会性を促したのだとすれば、この騒動の予期せぬ教育効果かもしれない。文科省はもちろん反面教師となる。

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