春秋

2019/11/10付
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古書店で掘り出し物があった。戦前から長く相撲界に身を置いた阿久津川高一郎さんからの聞き書き「チャンコ修業」だ。往時の力士や親方は下積み時代に食事の当番で苦労した。そのせいで調理方法や味付けにこだわりができ、ひとの手際を座視できなかったらしい。

▼名を得た師匠や横綱たちが「ワシがやる」とオタマや菜箸を奪いあったり、放さなかったりしたこともあったという。うまいと喜んでもらい、しかも食べて体を強くしてほしいという独特の奉仕だ、と阿久津川さんは言っている。骨身にしみた流儀なのだろう。それから幾星霜、力士たちの食へのかまえもかなり変わった。

▼強豪校経由の入門が増え、修業が短い。そのためか「コメは苦手」「シーフード味のカップ麺が好物」など今風のこだわりの関取も出てきた。格闘技だが神事の面も持つ競技。独特の共同体の中で進む変化は、土俵でぶつかる体づくりにかかわり、敢闘精神にも影響するだけに心配だ。今日、大相撲九州場所の初日である。

▼不祥事が相次ぐ中、本場所も巡業も大入り。「しょうがないなぁ」と叱られつつ、人気は復活してきたのである。個性豊かな面々が力や知略を絞って勝ち負けを競う。お茶の間も含め、その一瞬に酔う一体感の魅力ゆえか。変わったもの、変わらぬものを鍋の具材にそろえ、15日間が始まる。さて、どんな味に仕上がるか。

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