自分の情報、いっそ売って稼ぐ 買い物や遺伝子データ
先読みウェブワールド (瀧口範子氏)

コラム(ビジネス)
2019/11/10付
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NIKKEI MJ

企業が個人データをどう扱うかは今や大きな注目の的となっている。欧州では昨年、GDPR(一般データ保護規則)が施行され個人のインターネット上の行動に対するデータも保護の対象になったが、米国ではまだそこまでいかない。消費者は依然として自分のデータが売買されていると知りながら、手を出せない弱い立場にいる。

データクープにウェブから加入する画面では自分のデータの提供先を選べる

データクープにウェブから加入する画面では自分のデータの提供先を選べる

そうした中、どうせ自分でコントロールできない個人データならマネタイズすればいい、という仕組みを提供するサービスが出ている。

例えばデータクープ(Datacoup)は「(データを独占するネット企業に)そろそろ分け前を請求する時」だと掲げ、ソフトウエアやアプリを個人に向けて用意している。

自分のSNSの利用状況やクレジットカードによる購買履歴のデータが売られると、アプリを通じてお金が入ってくる仕組みで、5ドル(約550円)たまると引き出せるようになる。。自分のデータを買える企業を決められるのが特徴だ。

モバイルエクスプレション(MobileXpression)でも、アプリをダウンロードしたモバイル機器を通じて、自分がネット上でどんな行動をしているのかを企業にモニターさせる。最初はアンケートに答えるだけ。その後、ギフトカードが時折送られてくるのが報酬だ。

以前から米国には、マーケティング会社や調査会社が一般消費者にバーコードのスキャナーを配り、買った商品を日常的に報告してもらうことがあった。ネット時代にも手掛けるのが、ナショナル・コンシューマー・パネル(National Consumer Panel)である。

買った商品を特定のスキャナーやアプリでスキャンするとポイントが貯まり、買い物に充てられる。2万ドルが当たる抽選も定期的にあり、協力者をうまく引き留めている。

個人データの最たるものと言える自分の遺伝子情報でも、提供して何らかの報酬を得るサービスがある。ルナDNA(LunaDNA)は個人から集めた遺伝子情報を匿名にして研究機関に売り、売り上げを情報の提供者に還元する。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

具体的には、利用者はまず他の遺伝子テスト会社で分析してもらう。そのデータを得たルナ社は研究機関などに販売する。個人はルナ社の株主になり、売り上げの一部を配当金として受け取るという流れだ。遺伝子情報を提供することで医学の進歩にも貢献できると、ルナ社はアピールしている。ウエアラブルなどでモニターできる健康状態や医療記録にも、対象データを広げる計画のようだ。

また、ハーバード大学教授が創設したネブラ・ジェノミクス(Nebula Genomics)のサービスでは、場合によっては自分の遺伝子の分析費用が無料になり、しかもデータの行方は自分でコントロールできる。

研究者や医薬品会社に提供したデータの価値に応じて、提供者に報酬がもたらされることもあるというビジネスモデルを描く。遺伝子を分析する会社は何社かあるが、提供者に情報売買の決定権を与えている点が独特だ。

今のところ個人データを売っても大きな収入には至らないが、黙っているしかなかった消費者に一種の力を与えるようになる。まだ一部だが、もっと広がるとネット企業と消費者との力関係が変わると期待したい。

[日経MJ2019年11月10日付]

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