伊集院静「ミチクサ先生」(60)

伊集院静「ミチクサ先生」
2019/11/10付
情報元
日本経済新聞 朝刊
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蕎麦(そば)屋で咳(せき)込みはじめた大助を見て、金之助は兄の身体の具合いを心配した。

二年前、咳が続くので大助は結核ではと病院に診てもらったが、結核ではないということだった。

しかし半年前から、また咳込むようになった。

今年の正月、大助は夏目家の家督を相続した。

大助、二十九歳。小兵衛はすでに六十八歳になっていた。

大助は茶を飲むと、ひと心地付いたように大きくタメ息をこぼした。

「あの寺はいい寺…

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