春秋

2019/11/6付
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朝晩、冷え込むようになった。近畿地方では、はや木枯らし1号が吹いたという。札幌も本格的な雪の季節が間近い。東京近郊の公園ではドングリがパラパラと落ち、春、満開の花で人々を楽しませたコブシやサクラの木の葉が黄や赤に色を変え、音もなく散っている。

▼「きりきりともみ込むやうな冬が来た」。高村光太郎の詩「冬が来た」の一節だ。まもなく誰もが実感しよう。「人にいやがられる冬/草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た」。しかし、厳しい局面を待ち望み、むしろ挑もうという作者は続けている。「冬よ/僕に来い、僕に来い/僕は冬の力、冬は僕の餌食だ」と。

▼いてつきそうな境遇を乗り切ろうとの気概が満ちる。抗しがたい人口構成の変化や長引く低金利といった冷たい逆風にさらされ、さまざまな業界が苦境にあえぐ昨今。「冬の時代」という言葉には停滞や低迷の時期といった意味合いがあるのだが、高村の「冬」は逆境に学び、それをはね返す人間をたたえる季節のようだ。

▼いっときユニクロがCMで使った「冬の詩」には、こんな言葉もある。「冬は見上げた僕の友だ」「冬は未来を包み、未来をはぐくむ」。昨今の報道を見渡せば、国内外の諸関係の中にも冷え込みが長引きそうなものが、そこここにある。高村の心の強さにあやかり、冬支度を整えようか。「春遠からじ」の言葉も信じて。

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