肌身離さず持ち運ぶスマートフォンの特性を生かした位置情報系ゲーム。ポケモンGOに続き、新規タイトルに注目が集まっている。
フラー(千葉県柏市)のアプリ分析ツール「AppApe(アップエイプ)」によると、「ドラゴンクエストウォーク」が売上高と1日当たり利用者数(DAU)の両方で、リリースから常にゲームカテゴリーのトップ5位に入っている。「モンスターストライク」「パズル&ドラゴンズ」「ポケモンGO」などの長期タイトルに割って入った。
恐るべきは利用者の定着度だ。アプリを所持するユーザーの日間起動率がサービス開始から1カ月を過ぎても60%を超えている。スタートダッシュだけではなくユーザーの定着に成功している。
当初の熱狂の理由は懐かしさと新しさを同居させたことにある。ドラゴンクエスト1のストーリーや敵キャラクターの出現、「最強装備」であるロト装備の解放など、初期からのファンが食いつく構造を導入した。
性・年代別にみると男性30代の利用者が最も多く、ドラクエウォークを早速始めたのが昔からのドラクエファンだったことがうかがえる。
ドラクエウォークの普及率(アプリ所持率)を地域別に見ると、新規タイトルにもかかわらず、関東圏だけでなく各地域に満遍なく広がっている。人口密集地でなくてもモンスターやアイテムが出現するうえ、位置情報ゲームの定石であるご当地イベントも取り込んだ。幅広いエリアでのユーザー獲得につながっている。
ドラクエウォークがさらに成長を遂げるには、ポケモンGOとの差が開いている都市部で熱狂を生み出すことが必要だと筆者は考える。現在、複数のユーザーが協力して戦う「メガモンスター討伐」があり、駅や広場など人が集まりやすい所に突如として強力なモンスターが出現する。そのためユーザーは集まるが、参加に向けた盛り上がりが薄めなのは否めない。
メガモンスター討伐では主に「こころ」と「アクセサリー」という装備品がもらえる。ただ、ポケモンGOの「色違いポケモン」ほどの熱狂は生み出せていない。こころやアクセサリーは他のプレーヤーに見せられないからだ。
色違いポケモンはユーザー同士で積極的に見せ合うしジムにも置け、顕示欲を満たす要素がふんだんにある。熱狂を生み出すには限定品自体の希少性のみならず、獲得後の顕示欲を満たす必要がある。
ドラクエウォークでメガモンスターを討伐した際に「家具」や「称号」「既存装備の色違い」などが出てくると、熱狂が生まれるのではないだろうか。もしくは、期間限定で各地に現れ、モンスターを倒して報酬が得られる「試練の扉」が、そういった役割を果たす可能性もある。毎日の通勤が楽しくなるドラクエウォークの成長を今後も見守りたい。
[日経MJ 2019年11月6日付]