春秋

2019/11/3付
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この人も自由の天地を求めて米国への移住を願ったという。「資本論」で知られるマルクスだ。1845年、テキサスを目指し、出身地であるドイツのプロイセンの国籍を離脱した。ヨーロッパからの移民受け入れを奨励する米の政策も彼の気持ちを後押ししたらしい。

▼貴堂嘉之さんの著書「南北戦争の時代」にあった。創立まもない当時の米・共和党は「自由な土地、自由な労働、自由な人間」のスローガンで奴隷制に抗した。マルクスはこれに労働者階級の解放の姿を重ねたようだ。党で初の大統領リンカーンの再選時には欧州から祝辞を寄せた。望む社会が近づいた興奮が感じられる。

▼米国の大統領選挙まで、あと1年。世界中の関心はズバリ、トランプ大統領が再選を果たすか否かだろう。そもそも自らの就任式に集まった人数でマスコミにかみつき、国境沿いの壁でもめたり、気候変動への対策に背を向けたり。中国との貿易戦争にも終わりは見えず、その破天荒ぶりに我々はすっかり慣れてしまった。

▼先達のごとく気高い理念で自国や他国を導く姿はなく、自らの亜種のような指導者をあちこちに生んだ。本紙の論考によればトランプ支持者は現状を「高学歴エリート対白人労働者の階級闘争」とみているらしい。むろん革命は道半ばの思いだろう。とすれば「孤立」「分断」の幽霊、まだ世界をうろつきそうな気がする。

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