街に出て顧客の声聞こう
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

コラム(ビジネス)
2019/11/5付
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日本企業の新規事業プロジェクトの現場では、社内にこもって会議を延々と行い、資料作りに没頭するが、実はターゲットとする顧客の声を全く聞いていないということがよくある。顧客の声を聞くという現地現物に触れることこそが、全てのスタートのはずだ。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labsに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

シリコンバレーでは街を歩いていると、スタートアップの人や学生に呼びかけられ突然インタビューを受けることがある。「どんな食生活をしているのか?」「どんな働き方をしているのか?」。その時々でテーマは様々だ。

スタートアップにとっても顧客にインタビューをすることは当たり前だ。今では有名なエアビーアンドビーも創業時は、創業者がずっと自社が提供する宿泊施設に泊まり歩き、直接顧客の声を聞き続けたという。

会議室から出よう。街に出て直接ターゲットとする顧客の声を聞こう。調査会社が用意したモニターに聞くのではなく、自ら声をかけ、自分の目で観察し、自分の耳で声を聞こう。

私もスタンフォード大学のデザイン思考で有名なd.schoolで「ホームレスの移動体験をデザインする」というテーマで授業を受けた際、まずいきなりバスで公園に連れて行かれ、ひたすらホームレスにインタビューをした。

やり方にも少し工夫をしてほしい。よくあるのは自分のアイデアを検証するために、アンケート形式で質問してしまうことだ。これでは浅い質問で終始してしまう。よく使われるのが"共感インタビュー"というものだ。共感する、とは相手の立場に立って相手を深く理解すること。自分の聞きたいことではなく、相手の話したいことに注目し「それはなぜですか?」などと深掘りしていく。友達になったつもりで、雑談するように話をする。

実際の発言(say)と行動(do)、その背後にある考え(think)と感情(feel)は全て違うため、インタビューで得た内容をこの四象限に分類して理解する。表層的な発言や行動ばかりを取り上げても、顧客の潜在的なニーズを捉えられない。背後にある考えや感情こそが真のニーズになる。

子育ても一緒だ。「朝ごはんを食べたくない」と言っている小学生の子供に、怒っても献立を変えても効果がないことがある。しかしその発言の背後にあるのが、「小学校で嫌なことがあって行きたくない」という考えだとしたら、解決策は変わってくるだろう。子供としっかり向き合い、ちゃんと話を聞いて日々の行動を観察しないとそのサインを見落としてしまう。

弊社の提供する研修プログラムでも顧客の声を聞くために必ず街に出てインタビューをしてもらう。はじめは緊張するし、絶対に断られると思いがちだが、大丈夫、断られるものだ。何人にも断られても、必ず答えてくれる人がいる。

顧客の声を直接聞いている人は強い。上司から茶々が入っても顧客の声にはかなわない。天気のいい日は外にでて街の人を観察し、勇気を出して声をかけてみてはいかがだろうか。

[日経産業新聞2019年11月5日付]

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