水産業に技術で革新の芽 マグロの品質、AIで見極め
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)

コラム(ビジネス)
2019/11/1付
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NIKKEI MJ

就業者の高齢化が進み後継者不足が進む第1次産業の中でも、深刻なのは水産業だ。アジアの中産階級人口の増加や世界的な魚食ブームでこの50年で世界の消費量は倍増している一方で、日本は1984年をピークに生産量が半分以下に低下している。

ツナスコープはマグロの尾の断面をAIで分析し品質を鑑定する

ツナスコープはマグロの尾の断面をAIで分析し品質を鑑定する

ところが、ノルウェーなどでは漁師の人口は激減したが、国の政策と生産性の向上で現在ではハイテク装備の漁船を使って安定した収入を得られる人気の職業となっている。漁獲枠の管理を徹底し、漁業組合のウェブサイトでは船ごとに割当量と現在の漁獲量を誰でも見られる。そうして脂ののったおいしいサバが日本に輸入され、我々が食卓で食べているのだ。

日本では漁業者が減っただけでなく、質より量で小さいサバも捕りアジアやアフリカに輸出している。どちらが高い利益率を確保しているのかは一目瞭然だろう。

そんな日本の漁業にもテクノロジーによるイノベーションがようやく芽生え始めている。例えば陸上でも水資源が低コストで豊富なため、プラント設備とセンサーによる水質管理を用いて陸での養殖が増えている。希少なチョウザメを養殖し、高単価なキャビアを生産する試みもある。

また、2017年末に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」のデータが18年末から一般に提供され、250メートル単位で海の水温観測データを誰でも入手できるようになった。気候変動により水温が激しく変化し、近年は魚が漁場を変えている。昔ながらの経験と勘に頼りづらくなり、データを活用した漁の実現にも期待がかかる。

捕った魚の品質の評価・管理でも熟練の匠の技に依存してきた。遠洋で捕れた天然マグロは品質により価格が大きく変わるので、鑑定はとても重要になる。尾に近い部分の断面を見て、マグロ全体の良しあしを見極めている。

身の色合いや脂ののり方、身の縮み方など複雑な形状の判別には独特の見方があり、10年かけてようやく一人前と言われる。まさに匠の眼力に依存してきた。そこに人工知能(AI)により実現する「TUNASCOPE(ツナスコープ)」というマグロ品質AI鑑定システムプロジェクトが始まっている。

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

ふじもと・けんたろう 電気通信大情報理工卒。野村総合研究所を経て99年にフロントライン・ドット・ジェーピーを設立し社長。02年から現職

電通国際情報サービス電通双日によるプロジェクトで、4千枚の画像データをAIに学習させることにより、35年のベテラン職人と85%の一致度まで精度を高めた。日本の職人の高い品質をAIが生かす分野はまだまだたくさんあるだろう。

寿司が世界に通用する食べ物になったように、日本食はグローバルなビジネスとしてチャンスが大きい。中でも魚は重要な食材だ。貴重な水産資源でもある魚を持続可能性のある資源として守りつつ、ビジネスとして拡大するにはテクノロジーの活用がますます重要になる。

養殖も含めて資源として管理しながら、値段を高くできるものは高くし、フードロスをはじめとした無駄を省き、世界中で愛される文化としてブランドを創り上げれば、ベンチャーや若い人材の参入も増えると期待できる。何よりも我々の大好きな魚をいつまでもおいしく食べるためにも、様々な挑戦に期待したい。

[日経MJ2019年11月1日付]

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