春秋

2019/10/28付
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強烈な方言がほとばしるラップミュージックが今、動画投稿サイトで話題だ。青森県出身の歌手、吉幾三さんが先月半ばにリリースしたそのタイトルも「TSUGARU」である。「おめだのじこばば どしてらば?」と歌い出して、お年寄りの会話調で歌詞がはずむ。

▼口をつく嘆きは津軽から東京や海外に出ていった息子、娘らが、とんと里帰りしてこないこと。続いて、寒さの中での医者通いや「いっぺい(一杯)やるべし」と憂さを晴らす姿もリズムに乗り、地方での高齢者の日常や思いをリアルに描く。250万回も再生され「ぜひ紅白歌合戦で披露して」との声も寄せられていた。

▼吉さんと言えば1985年に、何の娯楽もない故郷から都会への脱出をめざすラップ調の歌「俺(お)ら東京さ行ぐだ」をヒットさせている。あれから30余年、今回は「返歌」のごとく、残された側の心情を歌にしたともとれよう。ちなみに85年と昨年を比べると、人口に占める65歳以上の比率は10%から28%へと高まっている。

▼生まれてくる子の数は143万人だったのが92万人まで減った。バブルや平成の大合併、金融危機を乗り越えたものの、活力を失いつつある地域は再生できるか。本当の地方創生とは何か。「何年ふるさと背を向ける、そのうち絶対バチあたる」。歌の中での息子らへの愚痴なのだが、胸に手を当てる向きも多いと察する。

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